家族でも親戚でもない経済的に余裕がある人から金銭的援助を受ける、と聞くと、それは受け取ってよい金なのかと躊躇する。ところが、これが「援助交際」「パパ活」というカジュアルな言葉に置き換えられると、ぐっと身近に、気軽なものに変わる。パパ活をしていたと言われる24歳女性に82歳男性が東京・池袋で殺害された事件をきっかけに、ライターの森鷹久氏が、言葉のカジュアル化で違法な営業活動に取り込まれる人が増えている実態を探った。
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あれは本当に「パパ活」だったのか、そんな疑問が今でも消えない。というのも、パパ活というのは女性がみずからパパを募るのが原則だというのに、容疑者の女性が主体的に行ったと思われる形跡が極めて薄いのだ。
事件は1月21日の夜、東京・池袋のホテルで高齢男性の刺殺体が見つかったことで明るみに出た。翌日には、男性を殺害したとして24歳の女性が逮捕、続けて容疑者を匿ったとして29歳と25歳の兄弟が逮捕され、女性が高齢男性を相手に「パパ活」をしていたと各メディアが報じた。
数日後には、複数の週刊誌やニュースサイトが、女性に精神疾患の可能性があり、さらに兄弟の1人とかつて交際していたこと、そして「パパ活」が兄弟の指示によって行われていたらしいことを指摘していた。
「パパ活」とは本来、女性がみずから経済的な援助をしてくれるパパのような存在のパトロンを探すものだが、実際には、人に命じられると断れない性質の女性に兄弟がパトロン探しを強要していた、というのが事実のようだ。パパ活というと食事を同席したり、遊園地などで一緒に時間を過ごすなど、基本的に肉体関係を強要しないものとされるが、女性が命じられていたパパ活の実態は、命じられるがまま他人に体を売る、というものだったようだ。
この女性のように、肉体関係を前提としたパパ活を、第三者に強要されるケースが増えていると明かしてくれたのは、都内で複数のキャバクラ店を経営する野中孝さん(仮名・40代)だ。
「パパ活って言葉、テレビや新聞でも聞くようになったでしょう? あれで売春が一気にカジュアル化した。うちの店で働くキャストの女の子もホストにハマってしまい、売掛け(つけ)を払うためにホストから『パパ活やって』といわれ、実際にやっていました。大きな犯罪に巻き込まれる可能性もあり、かなり厳しく叱りましたが、本人は『パパ活だし』という感じ」(野中さん)