血液の採取などさまざまな検査を行っても「異常なし」と診断されるケースがほとんど(写真/GettyImages)

血液の採取などさまざまな検査を行っても「異常なし」と診断されるケースがほとんど(写真/GettyImages)

「昨年8月末に2回目を打った2週間後から胸痛や息切れに悩まされるようになり、病院に行きました。ネットで調べたら、接種後に同じような症状が出ている人がいたので、『ワクチンかも』と思ったのですが、医師に『接種後2週間も経っているので、ワクチンのせいではない』と言い切られてしまった。検査をしても異常がなく、薬の処方もされませんでした」

 ところが、接種から40日ほど経った頃から胃腸の調子が悪くなり、胸やけがして、食欲不振に陥った。さらに、ドライヤーや洗濯物を干すといった上半身を使う動きをすると息切れがし、異常な倦怠感に襲われるようになった。

「再度病院に行って、CTを撮ってもらったのですが、やはり異常がなく『ワクチンとは関係がない』と言われました。だけど接種から2か月後にはさらにひどくなり、起き上がれなくなってしまった。

 食事のときの胃の痛みから始まって、就寝時には激痛で脂汗が止まらず、救急車で病院に行きました。

 胃カメラで検査すると十二指腸から出血していました。普段なら考えられないことが次々に起こるので、私は『ワクチンに違いない』と強く感じていたのですが、やはり医師からは、『ワクチンでこんなに急激に悪化することはない』と否定されました」(Iさん・以下同)

 胃腸の症状は処方された薬で改善したが、胸痛や息切れはよくならなかった。医師はあてにできないと思ったⅠさんは、ネットで国内外の情報を検索し、「イベルメクチンが効くかもしれない」という情報を見つけ、通販で取り寄せた。この薬はもともと寄生虫による皮膚病などの治療薬で、新型コロナに効果があるとする研究が複数ある一方で、有効性に否定的な医師も多い。

「私も、普段なら怪しんでのまなかったと思います。でも、このときは藁にもすがる思いでした。不思議なことに、のんだ日の午後から楽になり、現在は仕事も家事もできるほど回復しました。

 でも、ツイッターで交流するようになったワクチン後遺症患者の中には、イベルメクチンが効かない人も多いです。ワクチンが原因と認めてくれる医師に巡り合えず、自分でさまざまな治療を試し、サプリメントをのんでいる人も少なくありません。治療もサポートも受けられず、困っている人がたくさんいるんです」

 外来や往診、オンライン診療などで、これまで300人以上のワクチン後遺症の相談を受けている統合医療センター福田内科クリニック(島根県松江市)副院長の福田克彦医師は、こう話す。

「大方の医師は、ワクチン接種直後の副反応症状には“想定内の問題”として対処する一方で、数か月以降に突発する症状や接種後の持病の悪化、長引く副反応に対してはお手上げで、『ワクチンは原因ではない』と複数の医師から断定されるケースがほとんどです。

 実際ワクチン後遺症に苦しむ人たちは、胸痛や動悸、呼吸困難感を訴えるケースでは呼吸器科や循環器科、頭痛やめまい、ブレインフォグや歩行障害、筋力の低下などは脳神経科や整形外科、月経の異常は婦人科など、さまざまな科を回っています。

 しかし、それら複数の診療科での精密検査で『異常なし』と診断されたあげく、紹介された精神科で『うつ病』や『統合失調症』などと診断された後、向精神病薬に依存させられ社会復帰できなくなる患者も少なくありません」

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