「日本はすっかりマスク生活が根づきましたが、7月からはマスクなしの生活を送るべきだと考えています」──そう語るのは、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師だ。新型コロナの猛威が一向に止む気配がないなか、大胆提言の根拠と長く続くマスク生活の危険性について矢野医師が語った。【全3回の第1回】
欧米諸国がマスク着用義務の撤廃を打ち出すなか、日本はいまだに「マスク神話」が根強い。しかし、米ワシントン州立大感染症科に留学経験を持つ感染症対策のプロである矢野医師は「7月には撤廃が可能」と提言する。
その根拠は以下の3つである。1つ目は、「ブースター接種の完了」だ。
コロナ対策のカギとなる日本のワクチン接種率は、総人口の約8割が2回目接種を終え、なかなか進まなかった3回目接種も岸田文雄首相が「1日100万回をめざす」とようやく本腰を入れた。
「高齢者や基礎疾患がある人も、3回目のブースター接種によってオミクロン株感染の重症化率はかなり抑えられます。遅くとも6月末にはほとんどの国民が3回目接種を終了する見通しで、大多数が免疫を持つでしょう」(矢野医師。以下カギカッコ内は同)
2つ目は、「飲み薬の普及」だ。2月10日に厚労省は、ファイザー社が開発した新型コロナの飲み薬「パキロビッド」を特例承認した。
国内での供給が始まった同薬に、矢野医師はこう期待を寄せる。
「パキロビッドは、コロナ治療薬の本命と目される『プロテアーゼ阻害剤』というタイプの治療薬で、重症化予防は90%との報告があります。
新型コロナの40~45%は無症状患者と報告されていますが、この治療薬が普及すれば重症化リスクの高い人たちが感染しても症状を抑えることが可能です」
パキロビッドと同じタイプの治療薬である3CLプロテアーゼ阻害薬は、塩野義製薬も開発を進めており、早期の承認が期待されている。
3つ目が「重症化率(毒性)の低下」である。
「今後も変異株が登場する可能性はありますが、それはオミクロン株よりも重症化率(毒性)が低い株になると考えられています。毒性の弱い変異株を持った人が無症状や軽症で出歩くことで、他人との接触機会が増え、ウイルスは弱毒化したものに入れ代わっていく。つまり、新しい変異株は普通の風邪により近いものになると考えられるのです」
(第2回につづく)
※週刊ポスト2022年3月4日号