「日本はすっかりマスク生活が根づきましたが、7月からはマスクなしの生活を送るべきだと考えています」──そう語るのは、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師だ。新型コロナの猛威が一向に止む気配がないなか、大胆提言の根拠と長く続くマスク生活の危険性について矢野医師が語った。【全3回の第2回】
もともと日本にはマスク文化が根づいており、マスク着用への抵抗感が少なかった。
2021年10月頃に日本で感染者数が激減した際には、イギリスなどの海外メディアは「日本人のマスク着用に対する意識の高さ」を感染者数減少の理由に挙げた。
しかしこのままマスク生活を続けていると、感染予防“効果”よりも“弊害”のほうが大きくなるかもしれない──矢野医師が「7月マスク撤廃」を訴えるのは、こうした懸念もある。
「人間は生まれてから様々な病原体に遭遇し、それに感染することで抗体を獲得していきます。特に幼少期は、親や同年代の友人の唾液などを介して、病原体に自然に感染するものです。
しかし、長期にわたってマスク生活を続けていることにより、子供たちは水痘(みずぼうそう)やムンプス(おたふくかぜ)、手足口病といった『かかっておくべき病原体』と接触する機会を奪われているのです」
そのことは、子供たちの将来に暗い影を落とす事態になりかねないという。
「幼少期の頃に感染せず、大人になってから水痘などのウイルスに初めて感染すると、抗体を持っていないため重症化したり後遺症が残ったりするリスクが高くなります。
たとえばムンプスは大人になってから初めて感染すると、睾丸が腫れて精子の数が減少することが知られており、水痘なども成人になってからの感染で重症化しやすくなる傾向にあります」