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「7月以降マスク撤廃」を唱える感染症専門医 最大のリスクは「熱中症」

夏のマスク生活にはリスクも(写真/EPA=時事)

夏のマスク生活にはリスクも(イメージ。写真/EPA=時事)

「日本はすっかりマスク生活が根づきましたが、7月からはマスクなしの生活を送るべきだと考えています」──そう語るのは、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師だ。新型コロナの猛威が一向に止む気配がないなか、大胆提言の根拠と長く続くマスク生活の危険性について矢野医師が語った。【全3回の第3回】

 7月以降のマスク撤廃は子供だけでなく、大人にも必要だと矢野医師は訴える。

「最大のリスクは熱中症です。もともとコロナ禍の外出自粛生活で体温調節機能が低下している上、マスクをつけると熱が体外に出にくく体内温度が下がりにくい。またマスクで口の中が湿っていると喉の渇きを体感しにくく、自覚がないまま脱水症状になりやすくなります。気温が既に高くなっている8月では遅く、7月にはマスクを撤廃すべきなのです」

 消防庁の統計によれば、新型コロナの拡大でマスク生活が日常化した2020年は、熱中症患者の救急搬送件数(全国)が8月だけで4万3000件超を記録し、調査を始めた2008年以降で最多となった。また、環境省の「熱中症対策行動計画」では、〈マスクの着用は、熱中症のリスクを高めるおそれがある〉としている。

「オミクロン株は高齢者を除きほとんど重症化しませんが、熱中症は高齢者だけでなく健康な若い人でもあっという間に重症化し、最悪の場合は命を落とします。コロナで重症化する危険性よりも、マスク生活を続けて熱中症になるリスクに目を向けるべきです」

 7月からのマスク撤廃を訴える矢野医師だが、その計画は段階的に進めるべきと主張する。

「昨年、RSウイルスにかかった子供が急増したように、一斉にマスクを撤廃すると水痘、ムンプス、サイトメガロウイルスなどが同時に襲いかかって来て、小児科の外来や病棟が疲弊する怖れがあります。また2年間流行していないインフルエンザのピークがずれて夏頃に流行する可能性もある。

 政府には今後、ブースター接種と飲み薬、変異株の弱毒化の様子を見ながら、感染症の病床対応を考慮して、段階的にマスク撤廃の準備を進めることが求められるでしょう。政府の対応が後手に回る前に、『マスクはやめましょう』と声を上げる必要があったのです」

 政府にはより柔軟で迅速なコロナ対応が求められそうだ。

(了。第1回から読む)

※週刊ポスト2022年3月4日号

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