この2年間のあいだ、新型コロナウイルスによって生活が激変させられたことで、様々なビジネスが大きな変化を強いられた。業績不振で路線変更を余儀なくされた仕事が多いなか、好景気に沸く分野もある。警察が何度目かの「最後の1店舗」宣言をしたDVD販売店摘発の報を受けたあと、いまだ円盤を求める客にどのように応じているのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。
* * *
今年1月、わいせつなDVDを販売目的で所持していたとして、警視庁が東京・歌舞伎町の店舗を摘発。店舗(倉庫)番と客引き役の男ら2人が逮捕された。警視庁は昨年、歌舞伎町に残っていた最後の「1店舗」を摘発後に、こうしたDVD販売店を「一掃した」と自信を見せていたが、実はその後すぐ、客引きたちの姿が確認されていた。
コロナ禍前より筆者は周辺取材を続けているが、「最後」宣言を報じるのはいったい何回目になるだろうか。実は2017年の11月にも、当局関係者が店舗の「絶滅」を宣言していたが、2020年までに復活したことを記事にしている。当局関係者に聞くと、2000年代にも「一斉摘発して根絶」とされたことも何度かあるといい、つまるところ「いたちごっこ」は今に至るまで続いているということだ。
「結局、根強いニーズに応える形の商売なんですね。コロナ禍で、それが際立った格好でしょう」
歌舞伎町で飲食店を経営する本田孝さん(仮名・40代)も、昨年の暮れ頃から、街頭に立つ怪しい雰囲気の男を何度も目撃していた。
「男がぼーっと立ってるくらいなら歌舞伎町じゃ不自然には見えませんが、あいつらは鋭い眼光を通行人に向けて、近くを通れば『DVD』ってボソっと漏らす(笑)。以前はキャッチも初老の男性ばかりでしたが、最近は若い男もいた。コロナで仕事がなくなったんだろうけど、若いんだしもっと仕事選べよなと思いますよ」(本田さん)
そんなキャッチについていくのは、10人中10人が高齢男性。コロナ禍以降で需要が伸びた、そう話すのは都内の成人向け書店スタッフだ。
「今や、その手の映像はネット環境さえあれば、誰でも気軽に、しかもタダで見れてしまう。もちろんそれらのサイトの多くは違法アップロードなんでしょうけど。一方、パッケージのDVDや雑誌はほとんど売れない。では誰がDVDを買うのか、そりゃもうおじいさんばかり」(書店スタッフ)