芸能

越路吹雪版『愛の讃歌』誕生秘話 作詞家・岩谷時子が描いた普遍的な愛

本誌写真部

2013年の『岩谷時子賞』第4回の様子。この年、岩谷は97才でこの世を去った(撮影/女性セブン写真部)

『愛の讃歌』(越路吹雪)、『男の子女の子』(郷ひろみ)など、数々のヒット曲を世に送り出した作詞家・岩谷時子(享年97)。どのような思いを詞に込めていたのだろうか。『愛の讃歌』を手がけてから70年目を迎えるいま、彼女と親しかった人々の話から探ってみよう。(本文中一部敬称略)【全3回の第2回】

越路吹雪とともに東京へ

 太平洋戦争が終わり、宝塚歌劇団は新しい局面を迎える。優秀な団員やスタッフが東京の映画会社から引き抜かれるようになったのだ。

 その波に乗り、1951年、越路吹雪は宝塚歌劇団から東宝へ移籍。東宝を選んだ理由は、宝塚歌劇団の創設者・小林一三の長男が社長を務めていたからだ。

 小林は「越路吹雪をひとりで東京に行かせるのは危ない」と、宝塚歌劇団の出版部の所属だった岩谷時子を付き人にして東京へ送り出したという。

 2人が東京にやってきた翌年の1952年に、突然、岩谷に訳詞の依頼が舞い込む。それは、1951年に越路が出演した舞台『モルガンお雪』の劇中で歌った英語の歌『ビギン・ザ・ビギン』を日本語に訳す仕事だった。英文科を卒業していることや、戦時中、雑誌の余白に自作の詩を載せていたことを知っていた越路が、岩谷を推薦したのだ。

 岩谷の訳詞は評判を呼ぶ。そして次々と海外の曲の訳詞を担当するようになっていく。
 
 なぜ、彼女の訳詞が評判を得たのか。何度も岩谷に取材をした経験を持つ音楽評論家の田家秀樹さんは、次のように分析する。

「岩谷さんの訳詞はいわば、意訳です。原語を直訳すると、越路さんの雰囲気に合わなくなってしまう。彼女は原語の世界を大切にしつつも、“越路さんにはこんな歌を歌ってほしい”と願って訳していた。それは、岩谷さんが越路さんのファンの代表だったからだと思います」

 そんな2人の関係を背景に生まれたのが、越路版『愛の讃歌』だ。

関連記事

トピックス

精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン