富士山噴火の現象別に被害範囲や時間予想を読み解く『富士山ハザードマップ』が2021年、17年ぶりに改定された。富士山噴火は本当に起こるのか? もしも本当に富士山が噴火したならば、都市機能にどのような影響を及ぼすのか。噴火後に起こりうる最悪の事態を知り、そのときに備えよう。
「富士山噴火で火山灰がレールに積もれば、富士山周辺の約1800kmの鉄道がストップしてしまいます」
そう話すのは、鉄道ジャーナリストの梅原淳さん。
「鉄道というのは、架線からの走行用の電気とは別に、レールからの信号用電流で列車位置を把握し、信号機や遮断機、警報機、ポイント切り替えなどを遠隔操作しています。その線路に火山灰が積もってレールから車輪の方へ電気が流れなくなると、安全運行に必要な信号用電流が阻害されます。すると信号や遮断機も操作できなくなるため、早めに運行を見合わせるようになるでしょう」
鉄道に灰が積もると列車は早めに通行停止
電気に頼りきりの現代人の弱点を突いてくるのが火山灰による電気への悪さだ。
「発電所と送電システムに悪影響を及ぼし、最悪、首都圏がブラックアウト(大停電)する可能性もある」と話すのは、危機管理アドバイザーの国崎信江さんだ。
「電線を支える器具の碍子に積もった火山灰が、降雨で濡れると漏電し、安全装置が働いて送電できなくなります。また、樹木などに火山灰が積もって電線に触れ、断線やショートを起こし、停電するケースもあります」
さらに、火力発電所の外気吸入フィルターの目詰まりや、太陽光パネルへの降灰などでも発電効率は低下するため、電力の供給が追いつかなくなる可能性も。蓄電池やEV(電気自動車)、ソーラー充電器などの用意は必須と言えよう。
アンテナへの灰付着や停電でスマホも不通に
災害時は通信制限されることの多いスマホだが、火山灰が降って携帯電話基地局が機能停止すると、「スマホは電話としてもデータ端末としても使えなくなる公算が高い」と言うのは、ケータイジャーナリストの石川温さん。
「火山灰が雨で携帯電話基地局のアンテナに付着すれば通話しにくい通信障害が発生し、停電が続いて大型バッテリーが電池切れすれば、携帯電話基地局が機能停止します。基地局は数kmごとに設置されていますが、最寄りの基地局が機能停止すれば付近では圏外になります」