北海道日本ハムファイターズの清宮幸太郎が、非常に珍しい形状の用具で打撃練習に励む姿が注目を集めている。通常のバットより20センチほど短く、グリップが2本。その結合部に円柱がある。米・Coaches Edge社製の打撃矯正用具「シークエンスバット」だ。
春季キャンプでは清宮だけでなく、昨季のパ・リーグ本塁打王、オリックスの杉本裕太郎や、阪神・江越大賀なども練習で使用している。日本球界にこの珍しいバットが徐々に浸透し始めている。
なぜグリップが2本あり、どんな効果があるのか。Coaches Edge社の開発担当者はこう語る。
「好打者は、打つ瞬間、左右の手でそれぞれ違った動きをさせています。その感覚を分かりやすく掴むために、グリップ2本の設計にたどり着きました」
この説明を理解するために、オリックスの吉田正尚のスイングを参照したい。バットがボールを捉えるインパクトの瞬間、右手の甲は上を向いているが、左手の甲は下を向いた状態でスイングしている。右打者に置き換えると、左手の甲が上を向き、右手の甲が下を向く形となる。
「その形が、左右の手を正しく使った理想のスイングです」
そう語るのは、シークエンスバットを米国から輸入しているプロ野球トレーナーの高島誠氏だ。
2本のグリップは、右打者なら主軸を左手で、補助グリップを右手で持つ(左打者はその逆)。その持ち方でスイングし、2本のグリップの連結部である円柱が、地面に垂直方向に向いてスイングできていれば、自然と正しい手首の使い方になっている、というわけだ。
連結部の円柱が地面と平行になっている場合、左右の手首は自然と正しい方向を向かない。
「ボールを打つ瞬間に手首が投手側に返ってしまう、いわゆる“こねる”スイングです。シークエンスバットを使う主な目的は、このこねるスイングを矯正すること。実はプロ野球選手にも、こねるクセのある選手は多いのですが、このスイングでは打球が上がりにくく、ヒットになりにくい」
あくまで矯正用具であるため、既に正しい手首の使い方ができている打者には必要ないという。
「オリックスの吉田選手、巨人の坂本勇人選手、エンゼルスの大谷翔平選手などには無用でしょうね。ソフトバンクの柳田悠岐選手も試してみたことがあるそうですが、『これは何の練習?』という感想だったそうです(笑)」