自民党で安倍派に次ぐ勢力の第2派閥・麻生派が分裂の危機にある。「河野太郎氏の動き次第では一気に解体に向かうかもしれない」(自民党ベテラン)と注目されているのだ。
きっかけは同派会長代理の佐藤勉・前総務会長が仲間を連れて「退会へ」と報じられたことだ。佐藤氏は5年前に旧谷垣グループから仲間6人で麻生派に合流したいわば外様組。菅義偉・前首相とも近く、菅内閣では総務会長として重用されたが、岸田内閣に交代すると一転、無役となった。佐藤氏と親交がある議員が語る。
「佐藤さんは麻生会長が自分の反対を押し切ってコロナ禍の銀座通いで落選した側近の松本純氏を派閥に戻し、副総裁特別補佐に起用したことや、旧谷垣グループ時代から佐藤さんと関係が悪かった岸田首相側近の遠藤利明・選対委員長と接近していることに“ないがしろにされている”と不満を強めていた。派閥離脱の気持ちは固いようだ。何人ついていくかだ」
同派会長の麻生太郎・副総裁がいまや岸田政権を支える「後見人」的な立場なのに対し、佐藤氏は1月下旬に岸田首相のライバルの菅氏と会談して派閥離脱の意向を打ち明けたとされ、その後も、2月15日には二階派の林幹雄・副会長や森山派の森山裕・総務会長代行など岸田首相と距離を置く有力者と相次いで会談するなど、麻生氏とはっきり路線を違えている。
「菅氏は周囲から派閥結成を求められている。佐藤氏もその1人で、菅派が旗揚げすれば参加するつもりではないか」(自民党ベテラン)との見方が強い。麻生派の勢力は昨年の総選挙を経て現在の勢力は衆参53人だが、佐藤氏らが離脱すると茂木派に抜かれて第3派閥に転落する。
だが、この動き、それだけでは終わりそうにない。というのも、麻生派は第2派閥とはいえ、急増の寄り合い所帯で決して結束が固いとはいえないからだ。