3月25日の開幕に向け、プロ野球12球団の春季キャンプが佳境を迎えている。シーズンを戦い抜くための「特訓機関」である今、選手たちは最新理論を踏まえた「特殊用具」を使って鍛錬を積んでいる。
2021年のプロ野球でオリックスのリーグ優勝を牽引した「打の功労者」が吉田正尚とラオウこと杉本裕太郎だとすれば、「投の功労者」は間違いなくエース・山本由伸だろう。そんな山本がトレーニングで用いる器具が「フレーチャ」だ。
陸上競技のやり投げよりも軽く柔らかい投擲(とうてき)物を使うジャベリックスローという競技があり、フレーチャは、その投擲物をより野球に適した形状にした。
長さ70センチ、重さ400グラムほどの形状だが、真っすぐ遠くに投げようとすると難しい。力任せだったり、腕や肘だけに頼った投げ方だと、すぐに落下したり、横回転がかかったりして上手く投げられないのだ。
フレーチャを含む野球ギアブランド「アイピーセレクト」のトータルプロデューサー・鈴木一平氏は「投手、野手問わず身体の全体を使ったスローイングの根本を身につけ、故障防止にも繋がるような設計になっています」と語る。
山本は入団1年目の2017年には、右肘の痛みを覚えることもあったというが、フレーチャの導入後は故障とは無縁に。トレーニングで真っすぐ飛ばせる場合は状態がよい、といったようにフォームの確認作業にも役立てているという。
スイングの良し悪しを確認できる
フレーチャを販売するプロスペクト株式会社に「エスパーダ」というバットがある。こちらはパイレーツの筒香嘉智が使用する器具だ。
その形状は、一目見るとバットの先端から芯、グリップまでがほぼ同じ太さに見える。だが実際は、すべての部分でミリ単位の調整がなされている。
前出の鈴木氏は、エスパーダを「スイングの“前半”が確認できるバット」だと説明する。