1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする。蛯名氏による週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、今回は田中清隆氏や藤沢和雄氏ら引退される調教師の方々との思い出についてお届けする。
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僕は現役時代にJRAで2万1183回騎乗しました。そのうち1091回騎乗して158勝と、騎乗数も勝利数も一番多かったのが田中清隆厩舎の馬です。
そのキヨタカ先生が、この2月いっぱいで定年退職されます。
僕が初めて田中厩舎の馬に乗ったのは1993年7月。開業して間もない厩舎で、とても活気があって、よく勝っているなあという印象。1995年にはリーディング8位になっています。
初めて勝ったのは1994年の秋、ホッカイルソーの新馬戦でした。この馬にはその後もずっと乗せてもらってオープン特別を2勝、弥生賞でも2着に入り(勝ったのは僕がデビュー戦で騎乗したフジキセキです)、皐月賞、ダービーにも連れて行ってくれた。秋には菊花賞で3着に頑張ったし、古馬になってからは日経賞を勝たせてもらいました。
その他にもレディパステル、ホエールキャプチャなど重賞を7つも勝たせてもらいました。キヨタカ厩舎のチームワークのよさは、蛯名厩舎でもお手本にしたいと思います。
そして、今年の引退といえば、やはり藤沢和雄先生。あえて僕が説明するまでもなく日本競馬界の宝です。リーディングトレーナーになること14回、JRAのGIを34勝など重賞126勝。通算1563勝(2月6日終了時点)は今の厩舎システムになってからはもちろん歴代最多です。
初めて美浦トレセンでお会いしたときのことは鮮明に覚えています。僕はまだ減量騎手でしたが、3頭ぐらい馬を連ねて馬場に入る時に声をかけていただきました。おお、この人なんか違うなと思いましたね、子供ながらに(笑)。全身からオーラが出ているようで、誰かに見られているなって振り返ると、そこにいらっしゃったなんてことはよくありました。
1996年にバブルガムフェローで初めてGIを勝たせてもらいました。昨年はエフフォーリアが天皇賞(秋)を勝って年度代表馬にもなりましたが、25年前には3歳馬が出走するなんて考えられないことでした。旧来の常識にとらわれず、新しいことをやっていくのは大変なことだと思いますが、それをやってのけるだけの信念とバイタリティがあり、常に日本競馬をリードされていました。