プロ野球の自主トレやキャンプでは、選手たちが“特別な道具”を使っていることがある。巨人の桜井俊貴がキャンプで導入したと明らかにしたのが、投球改善ツール「キレダス」。累計5万個の売り上げを記録したヒット商品だ。開発者の藤田剛士氏は元社会人野球の選手で、引退後は少年野球の指導も行なっている。
「子供たちに、『ボールを前で離そう』『肘を上げよう』と指導しても、その感覚を上手に伝えられない。そこで言葉で説明しなくても、使うだけで子供たちが正しい動きを理解できるような用具ができないか……と考え始めたんです」
開発イメージの土台としたのは、「紙飛行機を飛ばす」という投球感覚だった。
「ボールにきちんと力を伝えるイメージです。最初はボールと飛行機模型を合体させた試作品からスタートし、どうやったら自分の中にある感覚と合致するのか試行錯誤していきました」
キレダスは、成人男性が闇雲に投げたとしても、5メートルも飛ばせない。
「投げる際に手首が立った(手首が真っ直ぐの)状態で、体幹全体を使って投げないと遠くまで飛びません。球速や、飛距離、回転数だけでなく、コントロールの向上も期待できます」
当初は子供向けの商品であったが、現在は、大阪桐蔭など甲子園常連校でも練習に取り入れられているそうだ。2020年には、五十嵐亮太らヤクルト投手陣が取り入れたことも話題になった。
「練習がどんな理論に裏付けられているか理解することは大切だと思います。ただ子供の場合は、まず体で覚えることも必要でしょう。理解するのは後でもいい。使うだけで野球が上手くなる。これからもそんな道具を作っていきたいですね」
※週刊ポスト2022年3月4日号