二〇一〇年に公開された北野武監督・主演の映画『アウトレイジ』は、激しく入り乱れるやくざたちの抗争をたっぷりのバイオレンス描写とともに展開させて人気を博した。主要登場人物の顔の半分だけを並べた思い切ったデザインのポスターはインパクトが強く、迫力あるイメージ作りに大きく貢献している。そのポスターをデザインした中平一史氏に時代劇研究家の春日太一氏が話を聞いた。
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中平:最初はティザー(作品全体の情報を知らせない、早い段階での速報的な広告)のデザインをします。登場人物から四人だけ入れるという条件でしたので、その中で様々なパターンを作っています。
そうした中で、それぞれの両目だけを横広にトリミングして並べることにしました。やくざ映画で一番怖いのは、やはり目ですからね。
──『柳生一族の陰謀』(一九七八年、東映)のポスターがまさに、そんな感じでした。
中平:たしかに、その印象はどこかに強く残っていたかもしれません。
──それが正式なポスターになると「目だけ」から「顔半分」になっていったと。
中平:今度は十一人を並べるのですが、それをどう割り振ろうかと、これもいくつもパターンを試作しました。そこで、顔をフルで出すよりも、よりアップにして顔を切ろうということにしたんです。
──このクラスの俳優さんたちの顔を切ってしまうというのは、なかなか勇気のいることです。
中平:それは北野監督だからこそやらせてもらえたのかもしれません。
──それぞれの写真は新たに撮影されたのでしょうか?
中平:場面写真ですね。実際に役を演じられた現場の写真じゃないと、ニュアンスが変わってしまうと思いまして。