国民生活センターが呼びかける注意喚起のなかに、近年、増えているものとして「買い取り」をめぐるトラブルがある。2022年2月18日付けで公表されたのは、不要品や和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた、といった相談件数の推移だ。2020年は新型コロナウイルスの影響で減少するかと思いきや前年比115%となる6016件、2021年は途中までの数値だが、前年同期比119%の4867件を数えている。なぜ、買い取りを巡るトラブルが増えているのか、俳人で著作家の日野百草氏が、フランチャイズ方式などが増えている買取業者について実情を聞いた。
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「買取屋ね、強引になるには理由があるんですよ」
手広くネット通販系の運送業を営む経営者の話、新たな事業展開と高級時計に詳しいことから金、貴金属、ダイヤ、ブランド品、ブランド時計を扱う買取専門業者のフランチャイズになることを検討したという。このいわゆる買取屋、一部だが強引な買い取り、不明瞭な買い取りで社会問題になっている。
「その屋号を名乗っているだけで(一部は)フランチャイズです。マニュアルとかデータはもらえますけど、結局のところ素人だったりします」
老舗の質屋や古美術商、社会的な信用を長年築いてきた業者を除けば有象無象の世界、古物商許可の資格と聞くと大変そうに思う人もいるかもしれないが、はっきりいってよほどの法的な欠格事項(5年以内の刑事罰など)がある人を除けば誰でも取れる。試験もないので住民票と身分証明書に簡単な略歴と誓約書を付帯して提出するだけである。その是非はともかく、参入のハードルが低い分その質は玉石混交、大手の看板でもフランチャイズによっては素人同然の場合もあるという。
「それに物の価値なんて人それぞれでしょう、相場はもちろんありますけど、相場の曖昧なものもある。とくにマニアの商品なんてそれですね」
彼はそれなりの収入を得ているので個人的にマニアックなコレクションも多い。例として挙げてもらった。
遺族の子どもが遺品整理するときが狙い目
「たとえば時計です。ロレックスとかオメガなんて高いって誰でもわかるじゃないですか、でもロジェ・デュブイとかリシャール・ミルとか、なかなか分かる人は少ない」
誤解しないで欲しいがロレックスやオメガに比べて後者の価値がない、といった話ではない。あくまで日本国内における一般的な認知度の問題であり、まごうことなき高級時計である。時計マニアなど詳しい人にとって当たり前のランゲ&ゾーネやブレゲも興味のない人からすればわからないだろう。逆に変に指摘されることが少ないため普段つけやすい利点はあるし、目立たないからこそ知る人ぞ知る高級時計をつける、という人もいる。ただリセールは投機対象になっているロレックスの超高級ラインに比べれば(あくまでロレックスの一部に限っての比較だが)厳しいモデルが多いかもしれない。