お笑い界では阿佐ヶ谷姉妹がスターダムにのし上がり、ドラマ界では松嶋菜々子(48才)が『となりのチカラ』(テレビ朝日系)で“占いおばさん”を演じて話題沸騰。ネガティブな文脈で捉えられることも多かった「おばさん」のイメージは着実に変わりつつある。「なりたくない」から「うらやましい」へ──この逆転現象の背景には何があるのか。理由の1つに高齢化社会を挙げるのは、古典エッセイストで『オバサン論』の著書がある大塚ひかりさんだ。
「うらやましいかどうかはわかりませんが、近年おばさんが忌避される存在でなくなったのは確かです。現代の日本では女性の寿命が大きく延び、少子高齢化が進んだことでいわゆる“おばさん世代”である40〜50代の女性が年齢地図のど真ん中に位置することになった。高齢化社会の中において、この世代は日本社会の“主役”といって差し障りない。
さらに近年の“ジェンダーレス”や“エイジレス”といった年齢や性別で差別することをやめようという社会的な意識が高まったことも、この風潮を後押ししています」(大塚さん)
確かに、ひと昔前まではさかんに喧伝されていた「飲む打つ買うは男のたしなみ」「25才を過ぎた女は売れ残ったクリスマスケーキ」といった性別や年齢を強調するようなキャッチフレーズはいまや死語になった。
「性別や年齢に関する、ステレオタイプの決めつけや押しつけがなくなったことで、“おばさん”に付随する侮蔑的な感覚や嫌悪感が薄れたのだと思います。いまは、50代の女性でも『女子会』という言葉を抵抗なく使うのと同様に、おばさんを自称することにも以前のような抵抗がなくなっている」(大塚さん)
ライター歴43年を誇り、『女性セブン』で“オバ記者”として数々の体当たり取材をこなしてきた野原広子(64才)は、寿命が延びたことに比例して女性の「おばさん年齢」も長くなっていると主張する。
「人生100年時代となったいま、女は愛嬌や若さだけで世の中を渡っていけなくなる35才頃から完全なおばあちゃんになる75才くらいまでの間、つまり人生の3分の1以上をおばさんとして過ごすことになる。おばさんの母数が増えていると考えれば、メジャー化するのも当然でしょう。
しかも昔のように専業主婦ばかりではなく、会社員として働く人もいれば結婚や育児で会社を辞めて、非正規やパート、アルバイトで働く人もいる。私だって、記者のほかにアマゾンの倉庫から議員会館までいろいろなところで働いてきたけれど、どこにでもおばさんがいる。社会の至るところにおばさんが当たり前にいるようになったことで、存在感が増しているというのは確かだろうな、と思います」(オバ記者)