コロナ・ショック後の株高を背景に、日本では個人投資家が増加している。彼らの投資対象として大人気なのが「米国株」だ。このところ、書店に足を運べば米国株のノウハウ本がズラリと並び、大儲けした個人投資家のインタビューなどでも、米国株投資で短期間のうちに利益を上げた成功譚が多い。さまざまな証券会社の売れ筋投資信託ランキングでは、米国株を投資対象とするものが、決まって上位に来ている。
米国株がこれほど注目されているのは「米国経済は世界一強い」と考える人が多いからだ。実際、米国は目下、世界一の経済大国であり、株式市場の規模も世界一。移民が多いこともあって人口は増加しているが、「人口ボーナス」という言葉があるように、労働人口の増加は経済成長を促進するファクターの一つだ。人口が減少、経済も今一つでジリ貧状態の日本とは違い、明るい要素が多いのはたしかだろう。
米国株全体の方向感を示すNYダウやS&P500などのインデックスは、長期にわたって上昇を続けている。もちろん、古くは20世紀前半、世界大恐慌の引き金を引いたウォール街大暴落から、近年のリーマン・ショック、コロナ・ショックに至るまで、何度となく暴落相場は発生してきた。それでも、やがて株価は回復し、高値を更新。多くの投資家は、このように何度でも立ち直ってきた米国株の底力を信じているからこそ、虎の子の資金を預ける気持ちになるのだろう。
しかし、こうした手放しの米国礼賛ムードに警鐘を鳴らす人もいる。不動産コンサルタントの長嶋修さんは、著書『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)の中で、「1950年代以降『世界の警察』を標榜し、『ドル覇権』を握り、世界のトップに君臨してきたように見える米国ですが、今後は没落の一途をたどるでしょう。一ローカル国家に転落です」と予言している。
不動産市場を分析するうえで欠かせない、国内外の政治経済、金融市場の情勢を長年ウォッチしてきた長嶋さんは、不動産コンサルタントという肩書ながら、その相場観の的確さに定評がある。そんな長嶋さんが米国の没落を危惧するのは、米国の国民の間に「決定的な分断」があるからだという。