有村架純(29才)が主演を務めた映画『前科者』が1月28日より公開中だ。本作は、有村演じる若手の保護司と、森田剛(43才)らが演じる保護観察対象者たちの交流を描いたヒューマンドラマ。本作で特に注目を集めているのが、“前科者”に扮した森田の演技だ。SNSなどの口コミでは、「森田剛の演技に引き込まれる」「主役かと思うほどの存在感」といった声が見られた。森田の役者としての魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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本作は、原作・香川まさひと、作画・月島冬二による同名コミックを実写化したドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(WOWOW)の劇場版で、ドラマの続編に当たるもの。ドラマ版では新人保護司の奮闘記が描かれていたが、本作はその数年後の物語を描いた完全オリジナルストーリーだ。映画『二重生活』や『あゝ、荒野』などを手掛けた岸善幸監督(58才)がメガホンを取り、主演の有村とともにドラマ版から続投。大スクリーンで観るべき見応えのある作品に仕上げている。
物語のあらすじはこうだ。アルバイトで生計を立てながら保護司として “保護観察対象者=前科者”たちの社会復帰をサポートする阿川佳代(有村架純)は、困難もありつつも充実した日々を過ごしていた。そんなある日、殺人の罪で服役していた工藤誠(森田剛)を担当することに。物静かで真面目な工藤に真剣に向き合い支えるが、保護観察終了の最後の面接に工藤は現れず、社員登用が内定している自動車修理工場からも姿を消してしまう。時を同じくして連続殺傷事件が発生し、その容疑者として工藤が捜査線上にあがることになる。
映画版からの参戦組である磯村勇斗(29才)、マキタスポーツ(52才)は工藤を追う刑事コンビに扮し、若葉竜也(32才)演じるミステリアスな若者は、物語の展開に大きな影響を与える存在を担う。磯村演じる刑事・滝本は阿川の幼馴染みでもあるが、犯罪者を追う滝本と犯罪者を更生させる阿川という対局にある2人の関係性が本作のテーマに深みを持たせている。ドラマ版の続投組である北村有起哉(47才)、石橋静河(27才)、宇野祥平(44才)らが、阿川と親しい間柄にある人々を演じ作品に柔らかさを与えている。この中心に立ち、有村とともに“もう1人の主人公”を演じ上げているのが森田剛だ。
森田演じる工藤を“もう1人の主人公”と称したのは、彼が物語の軸となる“前科者”であり、本作のタイトルロールだからだ。工藤は罪を犯した男だが、ただ“悪”として描かれているわけではない。殺人罪で服役したものの、職場の上司からの酷いいじめに耐えかねた末に事件を起こしてしまったという背景がある。また彼は、幼い頃に義父の凄惨な暴力が原因で家族がバラバラになってしまったという過去も持つ。