自民党と公明党の連立が大きく揺らぎ始めた。公明党の山口那津男・代表が2月6日放送のBSテレ東の報道番組で、夏の参院選での自公選挙協力について、「(自民党に)相互推薦をお願いしたが、現にない以上、自力で勝てるようにやらざるを得ない」と岸田自民に“最後通牒”を突きつけたのだ。
支持母体の創価学会も1月27日に国政選挙や地方選挙の方針を決める中央社会協議会を開催し、選挙の支援方針は「人物本位」で選び、「今後より一層、党派を問わず見極める」ことを申し合わせたことが報じられた。これからは自民党以外の候補者を支援することもあり得るという大きな方針転換だ。
自民党議員にとって強力な「集票マシン」の創価学会との選挙協力がなくなることは、「落選」の危機に直結する事態だ。
創価学会と長年選挙で戦ってきた経験を持つ元共産党参院議員・筆坂秀世氏から見ても、その集票パワーは強力だという。
「創価学会は選挙活動を宗教団体としての重要な活動と位置づけていて、地方組織も選挙区単位で拠点を整備してきたと言われる。共産党も似ているが、共通するのは学会員も共産党員も揺るがない絶対的価値観を持っていること。自己犠牲を厭わずに選挙活動に勤しみ、対立候補にはガチンコの喧嘩姿勢で立ち向かう」
徹底したドブ板選挙がその象徴だという。
「コツコツと地元を回ってポスターを貼り、ビラ配り、戸別訪問を行なう。片っ端から電話を入れて候補者を推す。この電話作戦は精神的につらく、共産党でも『つらいからポスター貼りに回してください』という運動員が少なくないが、学会員は積極的にやる。それに指揮命令系統がしっかりしているから、指示が3日で末端まで行き渡る。友好団体や支持者だけを回る自民党の後援会にはとても真似できない」(同前)
その創価学会が今夏の参院選からは支援する候補を党派を問わず「人物本位」で選ぶ方針を打ち出した。自民党にとって脅威なのは、創価学会が自民党候補の「落選運動」を展開したときだ。
昨年の総選挙(比例代表)の公明党の得票数は約711万票で得票率は約12%。各小選挙区に平均12%の基礎票を持ち、選挙協力する自民党候補に上乗せされていた。
だが、創価学会が、自民党の「対立候補」を支援するという方針を決めれば、その選挙区の自民党候補は12%の票が減るだけではなく、その分が逆に対立候補に上乗せされるから差し引き24%の票を失うことになる。
『宗教問題』編集長の小川寛大氏は、「固い地盤を持つ世襲議員でない限り、そんなに票を失えば落選する。創価学会は1人区では自分の票だけで当選させる力はなくても、落選させる力は十分あります」と言う。