歳を重ねれば、誰しも容姿や運動能力に衰えを感じるもの。だが、同じ年齢なのに元気で若々しい人もいれば、見るからに老けて弱りがちな人もいる。その差はいったいどこからくるのか。【前後編の前編】
「そもそも老化には『加齢に伴う正常な老化』と『病的な要因が加わった老化』の2種類があります。前者は1年1年の積み重ねなので、個人差はあるものの、そう大きくはありません。問題は後者。食べすぎ、飲みすぎ、運動不足などでメタボや高血圧などの病的な要因が加わることにより、顕著な老化現象が現われてくる。これが大きな差を生んでしまうため、改善するのがアンチエイジングです」
そう話すのは、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターの米井嘉一教授だ。
老化は筋肉、血管、神経、ホルモン、骨の5つの要素に分けられ、それぞれの要素ごとに老化の進み具合は異なるという。
「体はさまざまな『部品』でできているため、骨から老化する人もいれば、筋肉から老化する人、神経から老化する人もいます。自分自身のどこが老化しているのか、まずはそれを知ることが大切です」(同前)
ちなみに日本とアメリカで行なわれた観察調査では、100歳以上長生きしている「百寿者」は、5つの要素がバランスよく老化していることが報告されているという。
老化する原因もさまざまで、米井教授によれば免疫ストレス、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣、糖化ストレスという5つの危険因子がある。
「酸化ストレスとは簡単にいえば体がさびることで、主な要因だと紫外線、喫煙、太りすぎが考えられます。酸化ストレスに対しては、体内で活性酸素を除去する『抗酸化能』が働いていますが、これが追いつかない状態になると老化が進んでしまう」(同前)
糖化ストレスの糖化とは耳慣れない言葉だが、米井教授いわく「体のコゲ」のこと。
「砂糖、卵、小麦粉、牛乳などを混ぜて焼くと、こんがり焼けたホットケーキが出来上がるように、糖分が体内で焼けてコゲつくのが糖化です。糖化が進むと老化が進み、糖尿病や高血圧、がんなどの成人病の原因になります。
抗酸化システムはメカニズムの研究も進んでいるが、人類がこれほど豊富に糖分を摂れるようになったのはつい最近のことで、糖化に対する防御機構(抗糖化)はまだ解明されていないのが現状です」(同前)