東大前刺傷事件や大学入学共通テストでのカンニングなど、受験をめぐるトラブルが相次いでいる。先日には悠仁さまの進学先が話題となったばかりだが、教育現場ではいったい何が起きているのか。教育評論家の尾木直樹氏と脳科学者の茂木健一郎氏が緊急対談した。【全4回の第3回。第1回 第2回を読む】
* * *
茂木:受験の波は皇室にも及んでいます。悠仁さまの筑波大附属高への進学が発表されましたが、東大合格者を多数出している進学校ですので、世間には「皇室までも偏差値重視か」などと批判する人たちがいます。だけど、筑波大附属の自由闊達な校風は友人や講演を通して知っているので、悠仁さまが学ばれる学校にはふさわしいと思っています。偏差値で選んでないですよ。
尾木:おっしゃる通りです。同校は一昨年、コロナで一斉休校になったなかでも、なんとか文化祭をやろうと、保護者も結束してオンライン上でヴァーチャル文化祭を開催しています。学校のスローガンは「自主・自律・自由」で、制服もない。
そうした学校を選んだのは、秋篠宮家の教育方針に合っていたからでしょう。批判している人たちこそが、「偏差値信仰」「東大信仰」に囚われている。メディアが「偏差値70超」「東大現役合格者数29人」とか報じていることも大きいのでしょうけど。
茂木:たしかに。その意味で、今回、筑波大附属の一般入試を受けられて、一般の「受験戦争」に巻き込まれる形になったのは残念です。
尾木:「試験も受けずに入ったのか」という批判が起きることに配慮されたのでしょうか。
茂木:アメリカにはSATという進学を希望する高校生が受ける共通テストがありますが、こんなペーパーテストはいらないというのが、アメリカの教育界の潮流です。
尾木:コロナ禍以前からSATを使わない大学が、大幅に増えていますね。
茂木:偏差値などという指標を使っているのも日本くらいです。偏差値なんて、受験産業の人たちのメシのタネに過ぎない。
尾木:日本の偏差値というのは従来の5段階評価を50段階に細かく分けたようなもので、学力を示す指標ではない。本当に大事なのは学ぼうとする「意欲」なんです。
茂木:悠仁さまは、東大への進学を希望されているのかもしれませんが、将来天皇陛下になられる方が「学びたい」というなら、東大側も総合的に判断して受け入れるのが筋で、ペーパーテストも不要だと思います。米ハーバードでも英オックスフォードでもそうするでしょう。