これまでの健康法は「何を食べるか」「どんな運動をするか」という視点が多かったが、近年の研究では「いつ」するかという時間軸の視点が重要なこともわかってきた。その時間軸として用いるのが「体内時計」だ。
時間軸による健康科学の研究に取り組む早稲田大学先進理工学研究科の柴田重信教授はこう言う。
「体の中には1日のリズムを刻むさまざまな体内時計があり、脳の視交叉上核にあるメインの体内時計も末梢臓器の時計も1日を24.5時間で刻んでいます。1日の24時間と微妙にズレているため、毎朝、『朝日の光』と『朝食』でこのズレを修正するのですが、近年の忙しい現代人の不規則な生活だと、知らぬ間にズレが大きくなり、老化だけでなく、さまざまな病気や体調不良の原因になることがわかっています。平日と休日で過ごし方が大きく違う人も要注意です」(以下、「」内は柴田教授)
2018年7月には食事の時間が発がんリスクに影響を与えるという論文も発表されている。午後10時以降、または就寝直前に夕食を食べる人は、それ以前に食べる人に比べて前立腺がんと乳がんにかかるリスクが20%高かったというものだ。
「ほかにも夜型人間は朝型人間よりも死亡リスクが高く、極端な夜型の人はうつ病のリスクが高まることが示されています。また、シフトワークを20年以上続けている人に対する疫学調査では、発がんリスクの上昇が見られます。100歳以上の方に聞くと、毎日の生活リズムが整っていますね」
では、何時に寝て、何時に起きるのが理想か。
「睡眠時間帯の分類としては、朝型・やや朝型・中間型・やや夜型・夜型の5つがある。入眠時間と起床時間の中間時間で評価して、中間時間が2時なら朝方、3時ならやや朝方と1時間刻みで区別します。たとえば夜10時に寝て朝6時だと、2時なので朝型です。ただし、早ければいいわけではなく、21時前に寝て朝3~4時に起きてしまうような極端な朝型の人だと、血液マーカーの数値が悪い傾向がある。夕食後、すぐに寝ているのが原因です。朝方~中間型の範囲に収めましょう」
そのために考慮したいのが入浴の時間帯だ。
「体温がぐっと上がって、下がるときに入眠が起こります。おおよそ入浴の1.5~2時間後で夜11時に寝たい人は、9時~9時半に入浴するといい。寝床でスマホをいじると、光でメラトニンの分泌が妨げられて寝付きが悪くなるので、厳禁です」