子供の6%、約80万人が夜尿症で、一部では躾の問題だとする風潮もあるが、れっきとした病気だ。主な原因は尿を濃くするホルモンの分泌低下や過活動膀胱、覚醒障害だが、早期の治療で治る。 2021年、5年ぶりにガイドラインが改訂され、昼間の“おもらし”の記載が追加された。また夜尿症と慢性便秘との関連も記されており、便秘治療で夜尿症が改善した例も多い。
子供の成長に応じて排尿機能は成熟する。0~2歳児は膀胱に尿が溜まると排出する反射的排尿を行なう。2~4歳児になると尿意を伝えられるようになり、このタイミングでトイレ・トレーニングを開始する。それが5歳になっても“おもらし”する場合は夜尿症を疑う。
夜尿症の定義は5歳児以降で、1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くものとされ、6~7歳児で10人に1人、13歳で100人に1人が夜尿症と推計されている。
東京慈恵会医科大学附属病院小児科の平野大志医師に詳しく聞いた。
「夜尿症は、お母さんの子育てが悪いからと責められ、辛い思いをしている方もいます。しかし、夜尿症は病気で躾の問題ではありません。夜尿症を起こす原因は3つ。その原因が単独、または複数重なり起こると考えられています」
原因の1つ目は尿を濃くする利尿ホルモン(ADH)の分泌低下により、夜間の尿を濃くできないこと。尿は血液中の老廃物や水分が集まったもので、膀胱に溜まり、排出される。夜間も老廃物や水分が集積するが、ホルモンの分泌が低下すると濃縮できない。その結果、膀胱が水でいっぱいになり、漏らしてしまう。
2つ目は膀胱に尿を溜められず、過活動膀胱と似たような状態になること。尿は濃いが、膀胱の排尿を司る神経が不安定となり、溜まっていないのに漏らす。