1年の延期を経て、ついに公開となる『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』。公開を前に、山口晋監督にインタビュー! 名作と名高い作品が“新作”としてどう生まれ変わったのか、映画の見どころと併せてたっぷり紹介します。
中学2年生まで劇場でドラえもんの映画を見ていたという山口晋監督。最新作『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)2021』には、そんなドラえもんオタクだった子供時代の気持ちが詰まっていると語る。
「ぼくが大好きなひみつ道具はスモールライト。おやつに埋もれておなかいっぱい食べてみたいとか、宝物のプラモデルの戦車に乗れたらどんな感じだろうとか……。“小さくなったら何をやりたい?”と子供の頃にわくわく想像していた夢をみんな、劇中でのび太たちが叶えてくれています」
ピリカ星の反乱軍から逃れるため地球へやってきた小さな宇宙人・パピと出会い、パピと彼の故郷を守るために立ち上がるドラえもんたち。スモールライトはパピとの心の距離を縮める大切な道具となる。
「手に載るほど小さな体のパピからすれば、人間たちは巨人です。そんな巨人たちの国へひとりで来て心細いときに相手が自分に合わせて小さくなってくれたら、どんなにうれしく、心強いだろうか。また、小さなパピ目線ではのび太の部屋の家具はきっと遠目にぼんやり映るでしょう。
そう考えてCGで鋭角だった机やたんすの角に丸みを出してもらいました。画もキャラクターの動きやせりふも“彼らならそのときどう感じるだろうか”となりきり、感情移入しました」
1985年公開作の再映画化となる本作にはオリジナルのキャラクター・ピイナが登場する。
「パピはピリカ星の大統領ですが、まだ10才でのび太たちと変わらない。そんな幼い彼が大役を背負って後ろ盾がいないのはつらいなって。“しんどいときには泣いてもいいよ”とそっと手を差し伸べてくれる心のよりどころとなる家族をパピに作りたく、見守り役の姉のピイナが生まれました。ピイナを通して、パピの年相応の子供らしさや天才の苦悩が伝わればいいなと思います」
ピイナ役の松岡茉優(27才)、独裁者・ギルモア役の香川照之(56才)など、ゲスト声優もキャラクターに彩りを添えた。
「ドラえもんの映画史上いちばんの嫌われ者としてギルモアを描きたいと香川さんにオファーしたところ、ただならぬ熱量で独善的なギルモアを演じてくださった。お芝居が“レベチ”だと感動したのは、存外に人間味にあふれているからです。ギルモアに悪者なりの弱さもにじみでて、“改心するかもしれない”という光を思いがけず感じさせてくれました」
パピの境遇や胸中へ思いを巡らせ、スネ夫やジャイアンなどの心の機微も丁寧に描きだした本作。それぞれのキャラクターに寄り添い、見る人の心にもやさしく寄り添う、あたたかい作品になっている。