「先生」「店長」「○○ちゃんママ」。こうした呼び名で会話が成立するのが日本語の便利なところ。しかし、「実は名前がわからない」ということはないだろうか。日頃お世話になっている人たちの名前を記憶して呼んでみるだけで、人生に劇的な変化が訪れるかもしれない──。
日常生活において、特に忘れやすくて困るのが「名前」だ。それは、名前が脈略のない言葉の羅列であり、本人と直接関連する情報が少ないため。
専門家サイト・オールアバウトで記憶術ガイドを務めてきた宇都出雅巳さんは、名前の記憶には「繰り返して口にする」ことが不可欠だと説明する。
「名前をよく覚えている人は、初対面の会話の中で『〇〇さんは~』と相手の名前を何度も呼んでいます。こうやって繰り返すうちに、その名前が一時的な記憶ではなく、長期記憶として脳に定着していくのです」(宇都出さん・以下同)
記憶力がいい人とそうでない人の差は、繰り返し口にする回数が多いか少ないかの差なのだ。
この「繰り返し」に加えて、さらに記憶を強化するカギとなるのが「イメージ」だ。
「たとえば、日本語で『悲しむべき』にあたる『lamentable(ラメンタブル)』という英単語があります。この単語を覚えるには、語呂合わせで『ラメンタブル』→『ラーメン食べる』と変換し、涙を流しながらラーメンを食べている様子など、連想されるイメージと一緒に記憶する。
人名の場合も、『門野さん』という人がいたとしたら、『カド』から四角を連想し、その人が四角い帽子をかぶっているところをイメージする。同じ『カドノ』という名前の有名人を連想してもいい。突拍子のないイメージでも構わないので、自分なりの想像と結びつけるのです」
加えて、相手の情報を引き出して、名前に多くの情報を結びつけておくことも大事だ。
「出身地や下の名前の由来など、相手の情報が多いほど思い出すための入り口が増えます。もし、その人が大阪出身だとしたら、自分の中にある大阪のイメージと、その人の顔や姿を結びつけて覚えておく。たとえば、その人が道頓堀川に飛び込む様子などをイメージしておくのです。すると次に会ったとき、名前は一瞬出てこなくても、そのイメージが浮かんで、“この人は大阪出身だ”と思い出し、その人に関する記憶が活性化し始める。やがて名前も思い出されるのです」