世界では続々と女性リーダーが誕生しているのに、日本ではいまだ実現していない。それほどまでにこの国の「ガラスの天井」は硬いのか──。先の自民党総裁選で岸田総理に肉薄した高市早苗・同党政調会長(61)は、日本初の女性総理候補のひとりと目される。ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。【全4回の第1回】
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──高市さんといえば、保守系言論誌で独自の国家像を打ち出す硬派な論客、という印象が強かったのですが、昨年9月の自民党総裁選に出た際、いろんなメディアに登場する様子を見て、イメージが変わりました。
「え?」
──高市さんと同じ、関西出身の替え歌のカリスマ、嘉門タツオさんと対談しましたよね?
「ああ(笑)。『チャラリ~、鼻から牛乳~』ね。あれを『チャラリ~、奈良から総裁~』と嘉門さんがアレンジしてくださっていましたね」
──嘉門さんがそれを口ずさんだ瞬間、隣に座っていた高市さんが不意に立ち上がって、「ヨッシャ」と呟いた。「強いリーダー」を演じる総理候補に、こんな気さくな一面があるんだと初めて知った読者も多いと思います。
「実はあの総裁選の間、コロナワクチンの副反応がひどくて、昼間はほとんど議員宿舎でダウンしていたんですよ。発熱はなかったのですが、体中の関節が痛んで、まともに歩けない状態でした。1日に3錠しか飲めない鎮痛剤を20錠も飲みながら討論会に臨んでいたんです」
──全然、そうは見えませんでした……。
「それだけ薬を飲むと腸が荒れて、座っているだけでお尻から血が噴き出るんです。それでも外に出れば、カメラで撮られるから、力強く歩かなければならない。朝と夜のテレビ討論会に出る直前にも4錠くらい鎮痛剤を飲んで、頭がボーッとして司会者の言っていることがよく理解できない時もありました。だから、自分の考えを一方的に話していた感じがします。ホントに反省です」
──見ている方は日に日に議論が深まっていく感じがしましたけど、舞台裏では大変だったんですね。総裁選中には、夜の自宅でTシャツ姿でくつろいでいる様子も映像で流れていましたよね。
「実は、あれが困ったんや……」
──いったい、何が?
「私は家事もダメだし、料理もヘタやし、何の取り柄もないんですが、テレビ局からあの映像を撮りたいと言われた時は部屋じゅうが『書類の山』で、片付いていなかったんです。総裁選の直前に政策集を1冊書いたでしょう。私は自分で原稿をパソコンで打って、校正も自分でやります」
──高市さんクラスの政治家になると口述筆記にして、秘書に丸投げする人がほとんど。ちゃんと自分で書く人は珍しい。
「でも、自分が持っている情報が古い場合もあるし、海外の事情も含めてファクトチェックをしないといけないから、役所や国会図書館から最新の資料を取り寄せます。それがいくつもの山となり、リビングを埋め尽くし……。ワクチンの副反応で指関節もイカれていたから片付けができなかった」