世界では続々と女性リーダーが誕生しているのに、日本ではいまだ実現していない。それほどまでにこの国の「ガラスの天井」は硬いのか──。先の自民党総裁選で岸田総理に肉薄した高市早苗・同党政調会長(61)は、日本初の女性総理候補のひとりと目される。ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。【全4回の第3回。第1回から読む】
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──政界では女性というだけで男にはありえない期待をされ、男にはありえない叩かれ方をする。女性であるがゆえのバッシングはありますか。
「それはあります。第2次安倍改造内閣の時に女性閣僚が5人も選ばれたのですが、予算委員会で野党やマスコミから責め立てられたのは主に女性閣僚でした。出版社や新聞社の偉い人の中には女性が出世するのを快く思わないような人がいて、狙い撃ちにしているんじゃないかなって疑ってみたくなったほど」
──どうしてそんなことが起こるのでしょう。
「そうねえ。仲良くしている女性記者がおめでたで産休と育休を取るって言ったのに、出産後まもなく永田町を歩いていたの。聞けば、女性の権利に関する記事が多い新聞社なのに、自社の記者が産休を終えるなり、人手が足りないからとにかく働けと。女性の体のこととか、それに見合った働き方とか、一部のマスコミの上層部はわかっていませんね」
──そんな男社会だから、どんなに実力がある女性閣僚であっても「“女”を使った」と非難される。
「そういうのがいちばんたちが悪い。私も初めて選挙に出る準備をはじめた30歳から40代で結婚するまでは、ものすごくやられました。たとえば、企業の社長さんや病院の院長さんが政策に賛同するから応援します、うちでミニ集会を開いてあげます、と。で、集会に行ったら、すぐに『高市早苗の愛人』と、実名で怪文書がまかれる。県会議員さんの家々も挨拶回りするでしょ。そうしたら、1回しか会ったことのない大物県議が『高市の愛人』にされる。で、やっと当選して国会に来たら、こんどは週刊誌に『森喜朗先生の愛人』と書かれる」
──散々ですね。
「ありえない。私の好みは別として(笑)、森先生は見上げるような大先輩ですよ。私は独身だったからいいけど、相手のご家族に不快な思いをさせることを事実無根で書かれて、迷惑かけてしまう。すると、もう、普通に事務所に訪ねて行って、ご挨拶すらしにくくなるでしょ」
──本会議場で隣にいるだけでも、ヘンな噂を仕立て上げられる。
「そうそう。だから私は同僚議員と飲み会にも行かないので、付き合いが悪いって。それが私の弱みであるように報道されてましたけど、もう若い頃に懲りて、誰から誘われても、ほとんど行かないんですよ」
──政界では会食を通じて互いを知ることの重要性を説く人が多いけど、女性の身になればそれが出世の壁になっている。
「誘ってくださるのは、ありがたいんですよ。だけど、男性議員と4人で飲んだとしても、たまたまその中の一人と店を出た時に写真を撮られたら、それだけで迷惑がかかる。後援会の懇親会でも、男女両方がいる時でないと出ません。悩ましいのは、地元の選挙で誰を立てるか、その候補者を私が極秘で説得するといった場面ですよ。絶対に二人っきりで会わない。電話で済ますか、昼間に事務所に来てもらって話す。そうなると、やっぱり人間関係って密になりませんよ。高市はドライとか、友達が少ないとか言われてしまう理由は、そこなんですね……」
──女性にとっては生きづらい世界ですね。
「相手が岸田総理であっても、私一人だけお店に呼ばれたら行きません」