在阪テレビ局のワイドショーで、レギュラーコメンテーターばりの露出を見せる吉村洋文・大阪府知事。だがスタジオで、コロナ禍の失政を追及する声は聞こえてこない。
コロナ感染第6波では大阪の深刻さが際立っている。大阪府の累計死者数は東京都を上回り、人口あたりの感染者数、死者数、病床使用率ともに全国ワースト1位。そんなに感染が拡大したのに吉村氏が、「野戦病院を作る」と設置した国内最大のベッド数1000床を誇る「大阪コロナ大規模医療・療養センター」は不人気でガラガラ。大阪市では国の感染者情報共有システムへの入力作業が遅れ、一時約2万人もの感染者が統計から漏れていた問題も記憶に新しい。
だが、不思議なことに、どんなに事態が深刻でも吉村氏の地元人気は今も絶大なのだ。
「在阪メディアが吉村維新ベッタリなことに違和感を覚えています。それが普通になってしまったのが怖い。在阪テレビ局が吉村知事を批判しないから、府民は“よう頑張っている”ってなるんですよ」
そう語るのは自民党大阪市議会議員の川嶋広稔氏だ。確かに、在阪テレビ局の吉村氏礼賛ぶりはすさまじい。吉村氏シンパ番組の代表格と言われるのが、読売テレビの土曜朝の情報バラエティ『あさパラS』だ。”常連”の吉村氏を「あさパラファミリー」と呼び、「先手先手の対策と徹底した情報発信で全国に通じるモデルケースを作りあげたリーダー」と持ち上げてきた。
吉村氏は大阪の病床逼迫が深刻化していたさる2月19日にも同番組に生出演した。大阪の死者数が話題になり、ゲストコメンテーターの大学教授が「大阪と東京を比べて絶対数が大阪は多いというのはなぜかというのは解明したほうがいい」と指摘すると、吉村氏は独自の見解を披露した。
「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます。職場もそうだし、生活もそうだし。もともと大阪って狭い所に高齢者の施設もたくさんありますし。大阪市内だけでも1000か所の居住系の高齢者の施設があったりして、非常に生活圏が近い。だから若い人に広がると高齢者にも広がりやすいというのはあると思う」
根拠は不明だ。それでも番組MCの吉本興業の芸人ハイヒール・リンゴは「おじいちゃん、おばあちゃんが近くに住んでるっていう人も多いし、まあ東京の場合はちょっと働きに出てて、田舎があってという方が多いかもしれないので、この辺の違いが出てきてるんじゃないかということですよね」と無批判に相づちを打ってみせた。
こんなやりとりが続くと、視聴者は“そうなのか”と納得させられてしまうのだろう。読売テレビに聞くと、「番組全体として政治的公平性については十分配慮していますが、様々なご意見を踏まえて今後の番組作りに生かしてまいります」(総合広報部)と回答した。