1980年代、日本映画界に彗星のごとく現れた薬師丸ひろ子(57才)、原田知世(54才)、渡辺典子(56才)。いまも第一線で活躍し続ける彼女たちの原点は、10代でヒロインを務めた『角川映画』にある。“角川三人娘”と呼ばれた彼女たちの才能を見出した編集者・映画監督・映画プロデューサーの角川春樹さんとが当時を振り返る──。【全4回の第4回】
3人そろって独立、そして、結婚
〈薬師丸は21才、原田は19才、渡辺は22才で角川春樹事務所から独立する〉
角川:私は常々、彼女たちには「芸能人になるな」と言っていました。私は映画界と芸能界は違うと思っているんです。歌も歌っていましたが、角川春樹事務所にいる以上は、歌手でもない。
私は出版社の代表でもあったから、本業は本を作って売ることです。芸能事務所のように役者によって成立させているようにはなりたくなかった。
だから彼女たちが独立するときも応援しましたし、独立後も何度か仕事をしています。薬師丸は、私が監督した『キャバレー』(1986年)にウエートレス役で出ていますが、助演でも光る演技をしていましたね。
遠藤:『Wの悲劇』ではそれまで主演ばかりだった三田佳子さん(80才)が脇に回り、存在感を示して、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得しました。それが43才のとき。
薬師丸さんは42才のとき、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲りましたが、同じくらいの年齢での受賞は運命的なものを感じますね。
角川:1997年に私が監督をした『時をかける少女』では、知世にナレーションをしてもらっています。この試写会を見に来た薬師丸が私のところにつかつかと来て、「角川さん、今度、私を撮ってください」と言っていました。
その言葉が2020年に私が監督した『みをつくし料理帖』での薬師丸と典子との共演につながるのです。
3人三様の人生を歩んでいますが、そういえば3人とも離婚していますね。薬師丸のお相手はミュージシャン、知世はイラストレーター……。