首都圏では新型コロナウイルスの感染拡大後、通勤ラッシュの激しさがかつてほどではなくなり、ダイヤ改正のたびに減便や終電繰り上げが話題になっている。一方、そこまで日常生活に大きな変化を強いられなかった地方では、通勤通学時の混雑緩和が再び大きな問題として浮上した。ライターの小川裕夫氏が、広島のJR可部線と熊本市電が行っている朝ラッシュ対策についてレポートする。
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長期化する新型コロナウイルス禍により、鉄道利用者の減少に歯止めがかからない。全国に路線網を有するJR各社は長距離移動が敬遠されているので、売上面で多大な影響を受けている。東京・大阪といった大都市圏の私鉄は、通勤・通学といった底堅い需要がある。それでも観光客需要が消失し、経営は厳しさを増す。
他方、コロナ禍にあっても利用者が増えるなど混雑する路線もある。それらの好調をキープする路線は東京・大阪といった大都市圏の鉄道ではなく、自動車依存の高い地方の路線にもある。
広島県広島市を走るJR可部線は、横川駅―あき亀山駅間を結ぶ約15.6キロメートルの路線だ。可部線の終点は横川駅だが、全列車が広島駅まで乗り入れる。そのため、通勤・通学需要も高い。
可部線は2003年に一部の区間が廃止。しかし、沿線の宅地化が進んでいたこともあり、2017年に河戸帆待川駅とあき亀駅の2駅が延伸する形で復活した。延伸区間は非電化だったので、復活にあたって電化改良にも着手されている。
わずか2駅とはいえ、いったん廃線になった路線が復活したケースはこれまでになく、それだけに可部線の復活は地方の鉄道事業者や住民たちを勇気づける朗報となった。
復活後の可部線は、その後も沿線人口や利用者が増え続けた。そのため、最近では朝ラッシュ時の運行に支障をきたすまでになっている。そうした事情から、JR西日本は今春にダイヤを改正。これまで一部の列車を2~3両編成で運行していたが、朝ラッシュ時はすべて4両編成で運行する。これにより列車一本あたりの輸送力が増え、混雑の緩和が期待されている。
混雑を緩和するには、運転本数を増やすことや車両の大型化による輸送力増強が対策として考えられる選択肢だ。