国際情報

ウクライナ侵攻を「プーチン氏の暴走」と結論付けることのリスク

(時事通信フォト)

国際社会の批判が高まるプーチン氏(時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、世界中が指摘するロシアのプーチン大統領の“暴走”について。

 * * *
 米国のバイデン政権が、プーチン大統領の精神状態の分析を最優先課題にしていると米メディアが報じたのは3月1日。プーチン氏が「妄想に陥り、追い詰められると暴発する危険性のある指導者」と米情報機関が解析したという。ウクライナへの攻撃は激化しているが、プーチン氏は本当に妄想に陥っているのだろうか。

 2015年にアスペルガ―症候群の可能性も指摘されていたプーチン氏。その彼が、「変わってしまった」というコメントを目にしたのは今年2月のことだ。2月7日、クレムリンでプーチン氏と会談したフランスのマクロン大統領が、こんな言葉を側近に漏らしたと報じられていた。「彼は3年前とは別人になってしまった。頑固で孤立している」。

 ロシアのウクライナへの侵攻が始まると、マルコ・ルビオ米上院議員は自身のツイッターに「プーチン氏は明らかに何かおかしい」とコメント。英インディペンデント紙にも「いくつかの神経学的、心理的問題を抱えているようだ」と述べたという。米国では政治家を中心に、「プーチン氏は変わった、おかしい」という声が上がっていく。プーチン氏が核の使用について言及したため、「常軌を逸している」と思われたのだ。

 一方、ジェームズ・クラッパー元米国家情報長官はCNNのインタビューで「プーチン氏は動揺している。彼の洞察力とバランス感覚が本当に心配だ」と述べ、8日には米下院の公聴会で、中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官が「プーチン氏は(現在の戦況に)怒り、いらだっている」という分析を明らかにし、同時に「精神状態は異常ではないと思う」と証言した。

 某情報番組にリモートで出演した元CIAの諜報員だというサイファー氏も、プーチン氏は変わったのではないかという質問にはっきりNOと答え、「20年間、彼は変わっていない」と言い切っていた。元外交官で作家の佐藤優氏も、文化放送のある番組でプーチン氏の行動について「暴走、独走じゃないんです」と述べている。

 さまざまな発言があるが、プーチン氏の精神状態が不安定になり、妄想に陥って暴走しているわけではないと私も考える。米の政治家らが「変わった」と言ったのは、自分たちにとって想定外の言動をするプーチン氏が理解不可能、制御不能になったと結論付けてしまえば、今の状況を理解しやすくなるという感覚があったのではないだろうか。

関連記事

トピックス

中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン