警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ロシアによるウクライナ侵攻で生活が一変した、日本国内に住むロシア人、ウクライナ人の現状や心境を探る。
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国際的ハッカー集団「アノニマス」が3月6日、ロシアの国営テレビなどを数十秒間に渡りハッキングし、ウクライナでの戦闘映像を放送したとツイッターで公表した。映像の中でアノニマスは、「国際的な出来事をロシアメディアが少ししか報じていないという報告を受けている」と主張しロシア政府の情報統制を批判、「戦争に声を上げよう」とメッセージを送った。
ロシア政府による情報統制は厳しさを増している。永住ビザを持ち、日本国内で暮らすウクライナ人女性、Aさんは、モスクワに住む母親の身を案じて電話をかけ、こんな話をしたという。
「母に『大丈夫?問題はない?』と電話をしたら、『何、どうしたの?』と言うので、『ウクライナと戦争になったでしょ』と言ったら、『えっ、戦争? 何のこと?』と。ロシアがウクライナに侵攻して10時間以上経っていたのに、母はそれを知らなかった。ロシアのテレビでは、ウクライナへの攻撃をニュースで流していなかったんです」
ロシアの中でも、ネットやSNSを利用せずテレビを主な情報源としている人たちの中には、今でもウクライナとの戦争について詳しく知らない者もいるという。だがAさんは、政府による厳しい情報統制が、ロシアに住むウクライナ人の身を危険にさらすことになるのではないかと心配する。
「母の身が心配です。母にはなるべく家から出ないように言いました。周りの人はみんな母がウクライナ人だと知っているから。いつどこで、報復されるか分かりません」
日本人と結婚し、都内に住むウクライナ人女性、Bさんは、連日ロシアによる攻撃が激しくなるウクライナでは、人々の間にいがみ合いや対立が起き始めていると話す。
「姉はキエフに暮らしており、その夫は18年も前からロシアに出稼ぎに出ているのですが、親族が姉やその夫のことを“裏切り者”と言っていると聞いて、ものすごく驚きました。
これまでずっとロシアで働いてきて、親族はそのことについて誰一人何も言わなかった。ロシアがウクライナを攻撃し始めると、親族たちが電話をかけてきて、姉にあいつは“裏切り者だ”と罵ったんです。18年ですよ。そんな前からロシアにいるのに、なぜ?と悲しくなりました」