『3年A組』のような結末はNG
もう1つ避けたい結末として挙げておきたいのは、視聴者に「説教くさい」と感じさせないこと。たとえば、瑞穂の姉はネット上の誹謗中傷がきっかけで自殺し、凌介も「疑惑の夫」とされて精神的に追い詰められましたが、「それはよくないからやめよう」という結末はエンターテイメントにしては説教じみていて、受け入れられ難いところがあります。
実際、3年前に同じ「日曜ドラマ」で放送された『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』は、終盤に向けて大きな盛り上がりを生みながら、「SNSで誹謗中傷した人々が事実上の真犯人」という結末に賛否両論。しかし、目立っていたのは、「説教っぽい」「ただの正論」「一番つまらない展開」などの否定であり、最終回でトーンダウンした感は否めませんでした。「誰が真犯人かを考える」という楽しみ方をしている人も多いだけに無理もないでしょう。
その点、『真犯人フラグ』は当時の教訓も踏まえて、「説教くさい」とみなされかねないメッセージ性を込めることより、エンターテイメントとして真犯人の動機や犯行方法をしっかり描くことが求められているのです。
ここまで挙げてきたように、「『あなたの番です』のような禁じ手を使わず、Hulu誘導をしない」「真犯人は当初から主要人物として出演していた人にして動機を明快にする」「説教くさいメッセージ性を込めない」。この3点をクリアできれば、それなりに視聴者を納得させられるのではないでしょうか。
いずれにしても、約半年間と放送期間が長かった分、“終わり方”のハードルが高くなりますが、リアルタイム視聴する人が増え、盛り上がるのは間違いありません。だからこそ、素晴らしい最終回を見せて、「半年間見続けてよかった」という声が飛び交うことを祈っています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。