3月15日、自民党の茂木敏充、公明党の石井啓一両幹事長が岸田文雄首相と官邸で会談し、年金生活者らにコロナ対策の給付金を支給するよう要請、首相は「しっかり検討する」と応じた。1人あたり5000円を見込んでいるという。
このことが報じられるや、ネット上は大いに荒れた。「選挙対策のばらまきはもうええかげんやめてくれ」「参院選前にこれって若者や納税者を馬鹿にしすぎじゃない?」「選挙対策のつもりなら5000円は馬鹿にしすぎだろ」など、批判は多方面に及んだ。
自公をめぐっては、18歳以下への10万円給付をめぐっても「安易なばらまき」と批判を浴びたばかりで、少なからず炎上するのは目に見えていたはず。それでもなぜこのタイミングでの要請に踏み切ったのか。
これに遡る2日前、公明党の山口那津男代表は東京都内のホテルで開かれた自民党大会の壇上で喜色満面、「(夏の参院選に向け)結束の土俵が整った」と強調していた。自公をめぐっては、参院選に向けた選挙協力に関して“すきま風”が取り沙汰されており、1か月前には山口代表が「(自民党に)相互推薦をお願いしたが、現にない以上、自力で勝てるようにやらざるを得ない」と自民に最後通牒を突きつけていた。
いったいこの1か月間に何があったのか。その間に自民が公明に用意した“お土産”が年金生活者への5000円給付だろうと、ベテラン政治ジャーナリストは推測する。
「公明党には、長年の選挙協力で『自民党小選挙区の議員に有利なだけでこちらには旨味がない』との不満が溜まっていました。支持母体である創価学会の不満はさらに強く、『汗をかくのはこちらばかりで、自民党は非協力的だ』という不平の声が募っていた。
18歳以下への10万円給付は公明党・創価学会の主張を取り入れ不満を緩和するものでしたが、学会員の高齢化が進む今、今度は高齢者からの不満が出てきた。それに対する対策が、今度の5000円支給案ということです。
近年の自民党支持者には若年層も増えており、そうした支持層から『ばらまき』と批判されることは自民党執行部も折り込み済みです。若年層の票が多少減っても、公明党から十全たる選挙協力を得られるほうが大事だと、執行部は考えたのでしょう」