企業や自治体、町内会などの“公募川柳”が盛んになっている。なかには、賞金や豪華な副賞がもらえるものも。実益を兼ねる趣味にできるのか──。川柳学会専務理事で十六代目川柳の尾藤川柳氏も以前は公募マニアだったという。
「もともと川柳作家でもありましたが、40歳でサラリーマンを辞めたのを機に、雑誌を買って片っ端から公募川柳に投句したんです。するとある公募に入賞して、賞金2万円をもらいました。3年くらいそのような生活をしていましたね」
尾藤流の公募川柳投句の基本は「テーマから外れない」ことだ。
「実は、テーマとあまり関係ない内容の作品を投句する人が少なくないのです。テーマに沿うことを常に意識しましょう。そのうえで“五・七・五のリズムを守る”ことが鉄則です。川柳は定型詩です。最近の公募川柳には五・七・五の七が八になる『中八』が目立ちますが、本来はアウトです。私が選者だったら即、落選です」(尾藤氏)
お題のテーマに沿い、定型を守ることに加え、ダジャレなどただの言葉遊びにならないようにするのが重要なのだ。
尾藤氏が選者を務める2021年の「第5回働くパパママ川柳」(オリックス)では、次の川柳が大賞に選ばれた。
〈テレワーク 九九の呼吸が 漏れ聞こえ〉
「学校に行けない子供が自宅にいる中で、仕事に奮闘する様子が伝わる川柳です。『テレワーク』『呼吸』といった昨年のトレンドを言葉遊びではなく、上手に取り入れています。
ただし、今年の公募で同じような言葉選びではいけません。コロナも3年目で、テレワークという言葉には新鮮味が欠けます」(尾藤氏)
かといって、ただ単に流行語を使えばいいわけではない。同じく尾藤氏が選者の「第7回健康(セルメ)川柳」(2019年)では、以下の句が選外となった。
〈薬剤師 妻とスクラム ワンチーム〉
「ラグビーW杯で流行した『ワンチーム』を使った、似たような句がこの年は非常にたくさん集まりました。
優れた句には、独創性やオリジナリティがある。“作者の目を通した社会や世界を表現”できると良い句となります。そのなかで流行語を用い、“今の時代”を表現するのです」(尾藤氏)