遺体搬送業務を巡る汚職事件で受託収賄の罪に問われていた神奈川県警の元警部補・加藤聖被告(49)の判決が3月15日に横浜地裁で行なわれ、懲役2年6か月の求刑に対して懲役2年6か月・執行猶予4年の有罪判決が言い渡された。公判を通じて、神奈川県警の組織体質や慣習の問題が浮き彫りになった一面もあり、信頼回復のための取り組みが急務となりそうだ。
加藤被告は警察が扱う遺体を特定の葬儀会社にあっせんした見返りとして、現金127万円と68万5000円分のQUOカードを受け取っていたとされる。公判では「神奈川県警内のすべての警察署で葬儀会社からビール券などの金券提供があった」と証言し、検察側は「警察官の職務に対する社会の信頼を失墜させた」と指摘するなど、その発言が大きな注目を集めてきた。
事件に巻き込まれたり、何らかの理由で発見された遺体を警察官が自分の利益のために利用しているとすれば、あってはならないことだ。加藤被告の供述通りのことが常態化しているのだろうか。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏によれば、神奈川県警と葬儀社には“特殊な関係”があったという。
「死因不明の遺体が上がると、刑事は現場に駆けつけて現場検証をしたうえで死因を特定するために監察医がいる病院か警察署の霊安室まで搬送します。警視庁や他の県警では通常、搬送車両を所有しているのですが、なぜか神奈川県警には車両がありません。そのため、1つの署につき年間200体以上は上がる変死体を搬送するのにその都度、葬儀社に頼らざるを得ない事情がある。加藤被告の現金と商品券合わせて約200万円を受け取るというのはあまりに極端なケースですが、葬儀社と警察官が近づきすぎる懸念のある環境があったのはたしかでしょう」
医師が看取った場合などを除き、事件性があるかないかに関係なくほぼすべての遺体は変死体として扱われる。厚生労働省の死因究明等推進本部事務局作成の資料によると、令和元年の神奈川県警の死体取扱数は約1万2300体。全54署ある神奈川県警で、1つの署につき年間200以上の変死体を扱う計算になる。搬送車両のない神奈川県警では、その度に担当刑事が葬儀社を呼ぶため、それだけ関係性は深くなるというのだ。