吉川尚輝は潜在能力からすればもっと活躍していいはず(時事通信フォト)

吉川尚輝は潜在能力からすればもっと活躍していいはず(時事通信フォト)

「今年は巨人が変わる良いチャンス」

 巨人はFAに頼る戦力補強をしてきたため、若手にチャンスが与えられる機会が少なく、生え抜きの中堅がレギュラーを確保できていない現実もある。坂本入団の翌年(2007年)以降、過去15年のドラフト選手で完全に1本立ちしたといえる野手は、長野久義と岡本くらいだろう。

「吉川も頑張っていますけど、潜在能力からしたらもっと活躍してもいい。藤村大介は盗塁王も取りましたし、二塁に定着するかと思いましたが、2年しかもたなかった。大田泰示は日本ハム移籍後に開花しましたし、2012年2位の大累進は3年で日本ハムへ、2013年2位の和田恋は5年で楽天へ放出されています。その年4位の奥村展征は1年で相川亮二の人的補償でヤクルトへ行きました。小林誠司は一時期レギュラーでしたが、打撃力が低く、定着できていません」

 大累は二軍でも結果を残せていなかったが、和田は2018年にファームで本塁打王、打点王の2冠を獲得していた。しかし、翌年のシーズン中に古川侑利との交換トレードで移籍。2019年、イチロー以来となる高卒1年目で二軍の首位打者に輝いた山下航汰はケガもあって伸びず、昨年育成での契約を拒否し、自由契約となった。

「FA補強をすれば、どうしてもその移籍選手をある程度起用することになる。『その中でもポジションを掴むのが本当のレギュラー』という言い分はその通りですけど、これだけ生え抜き野手が伸びない現状、FAで有力選手を獲得できない近年を考えれば、若手の育成に本腰を入れないと巨人の未来は危うい。

 昔のように、プロ野球選手の多くが巨人に憧れる時代ではなくなっているので、これまでのようにFAでチーム力を強化することは難しくなるかもしれません。まさに今、FAでその場凌ぎの補強をしてきた歪みが現れつつある。裏返せば、今年は巨人が変わる良いチャンスかもしれません」

 昨年まで実力至上主義を掲げていた原辰徳監督も、今年は「同じ力なら若手を使う」と公言している。待望の生え抜き野手の成長はあるか。

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