3月14日、国際連合の事務総長は記者会見で、「かつては考えられなかった核戦争が、いまや起こりえる」と世界に警告し、「さらなる戦禍の拡大は全人類を脅かす」と続けた──。
2月24日に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻は日々混迷の度を深める。ロシア軍は避難中の市民に発砲したり、学校や病院を破壊する暴挙に出ている。ロシア軍が制圧したヘルソン州では、「ヘルソン人民共和国」を設立するための「疑似住民投票」の準備が進められているという。東部の「ドネツク」「ルガンスク」両人民共和国と同様、親ロシア政権を樹立する狙いだろう。
当然、ウクライナのゼレンスキー大統領(44才)は「ロシアがヘルソン州でまた偽の共和国をつくろうとしている」と批判を強めているが、ロシアの動きは止められない。暴挙の数々を指揮するのはプーチン大統領(69才)。その精神状態には多くの専門家が懸念を寄せる。軍事ジャーナリストの竹内修さんの解説。
「アメリカの情報機関は“プーチン氏の考え方は以前と比べ硬直している”と分析しています。少なくとも、2012年に日本から秋田犬をプレゼントされて笑顔だった彼とは人柄がガラリと変わっています」
米政府から報告を受ける立場にある上院情報特別委員会のマルコ・ルビオ上院議員はツイッターでこう述べた。
「いま言えるのは誰もがわかる通り、プーチン氏は“何かがおかしい”ということだ」
オバマ政権の駐露大使として何度もプーチン氏と懇談したマイケル・マクフォール氏は「いまのプーチン氏はいっそうタガが外れた状態になっている」と指摘。前国家情報長官のジム・クラッパー氏も米CNNのインタビューで、「プーチン氏はひどく動揺しており、彼の判断能力とバランス感覚が本当に心配だ」と危惧した。
プーチン氏が切羽詰まっているのは間違いない。容易だと考えていた首都・キエフの陥落が思うようにいかず、SWIFT(国際銀行間通信協会)から排除され、資金のやりとりは孤立。ロシアの通貨ルーブルは暴落した。
経済制裁はさらに続き、アメリカはロシア産の原油などの輸入を禁止する措置を取ると発表。日米欧の先進7か国(G7)は関税を抑える優遇措置を適用する「最恵国待遇」の地位からロシアを外す方向で一致している。当然、市民生活は苦しくなり、ロシアの世論も変わる。元産経新聞モスクワ支局長で大和大学社会学部教授の佐々木正明さんが言う。