近年目覚ましい活躍を見せ、いまやテレビや映画で見ない日はない柄本佑(35才)と柄本時生(32才)。兄の佑は放送中のドラマ『ドクターホワイト』(カンテレ・フジテレビ系)や映画『真夜中乙女戦争』に主要な役どころで出演中。弟の時生も、最終回を迎えたドラマ『真犯人フラグ』(日本テレビ系)での好演が記憶に新しい。いずれも印象的な役どころを演じているが、特に最近は兄弟で真逆とも言える役を演じ、注目を集めている。両者の違いや魅力、ルーツについて、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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兄の佑が出演する『ドクターホワイト』は、作家・樹林伸(59才)による小説『ドクター・ホワイト 千里眼のカルテ』とその続編『ドクター・ホワイト 神の診断』を原作に、浜辺美波(21才)が主演を務めた医療ドラマ。瀧本美織(30才)や石坂浩二(80才)ら豪華俳優陣が集結し、記憶喪失で社会性に欠けるものの、医学知識を持つ謎の女性・白夜(浜辺)を中心に、シリアスかつコミカルなタッチの物語が展開する。そんな作品で佑が演じるのは、白夜を保護することとなった医療ライター。ミステリー要素も含んだ本作において物語の舵を切る役どころであり、浜辺を一番近くで支えるポジションだ。
一方、弟の時生が出演した『真犯人フラグ』は、失踪した家族を捜す男の奮闘を描いたミステリードラマ。主演の西島秀俊(50才)を筆頭に、宮沢りえ(48才)、芳根京子(25才)、渋川清彦(47才)など人気キャストがこぞって出演し、先の読めない展開と演技合戦が話題を呼んだ。そんな作品で時生が演じるのは、“妻子失踪事件”に端を発するさまざまな事件に土足で介入してはネット配信して大衆を煽る、迷惑なユーチューバーだ。他のアクの強い面々に引けを取らないキャラクターで、物語の展開をかき回し、盛り上げ役を買って出ている。
こうして見比べてみると、佑と時生は真逆と言える役どころを演じている。兄の佑は作品のより中心部に近いところに立って物語を引率し、同時に支えるポジションでもある。彼の存在は作品全体のクオリティにも影響するものだろう。そして弟の時生は作品の中心と外側を行ったり来たりして、非常に自由な振る舞いを見せている。彼が物語の核心に触れることも多々あるが、どちらかと言えば作品のスパイス的な存在なのではないだろうか。
兄・佑は主役級の俳優で、弟は当代きってのバイプレイヤー。ここ最近の2人の活動だけに目を向けると、そんな意見も出てきそうだ。事実、佑は2021年には映画『痛くない死に方』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』という2つの主演映画が公開され、6月放送開始予定のドラマ『空白を満たしなさい』(NHK総合)でも主演を務める。“作品の顔”になることが多いわけだ。対する時生はというと、例えば映画『CUBE 一度入ったら、最後』ではごく限られた出演シーンだけで観客にインパクトを与え、作品の世界観を提示する役割を担った。この手堅さなどから、たしかに彼は“バイプレイヤー”といえる存在だと思う。