国外のみならずロシア国内からもプーチン大統領のウクライナ侵攻に厳しい批判の声が上がり始めている。西側諸国から厳しい経済制裁を受け、急激なインフレによってロシア国民の生活が脅かされるなか、プーチン氏は侵攻を止める気配すら見せない。2000年の大統領就任以来、首相職を経ながら20年以上も国家のトップに居続けるプーチン氏だが、なぜその権力基盤は揺るがないのか。その背後には、単なる強権的な国家運営にとどまらない、したたかな”統治体制”があるとみられている。
プーチン氏は、自らの権力を確かなものにするために長年にわたって綿密な計画を進めてきたと解説するのは国際政治アナリストの菅原出氏だ。
「今回のウクライナ侵攻への批判が国内でも広がり、プーチンの支持基盤までもが彼に反旗を翻して政治生命が断たれる可能性はもちろんゼロではありませんが、当然そういう可能性を潰すために彼は大統領になった当初から入念に手を打ち、およそ20年かけて独裁権力を守る体制を築いてきました。
プーチンは国内の治安機関や情報機関などをいくつも競合させるような形で、複雑に運用しているんです。一つの機関に権力が集中しないように、任務などもわざとオーバーラップするような組織をいくつも作っています。
そしてそれぞれのトップに、自分が個人的に信頼できる人間を置いている。警察組織のトップである内務省しかり、国内反乱が起きたときに出動する国家警備隊しかり。この国家警備隊の中にも、さらに特殊部隊や緊急対応部隊を作ったりして権力を分散させています」