“身長168cm以下”の男性に向けたブランド「ユナイテッドアンツ(UNITED ANTS)」が注目を集めている。代表を務めているのは自身も身長162cmと小柄な大谷成さん(27)だ。ターゲット層を絞ったメンズブランドは、なぜ話題を呼んでいるのか。代表の大谷さんに話を聞いた。
もともと新卒で入社したバッグメーカーで働いていた大谷さん。ビジネス書を読むうちに起業意欲が湧き、3年半勤めた会社を辞めて新たなメンズブランドの立ち上げを決意した。自身の悩みを解決するためにも、小柄男性向けのアイテムを開発していった。
まずは2020年末にクラウドファンディングで資金を募ったところ、“足長効果抜群のフレアパンツ”が話題を呼んで見事に目標金額を達成。翌2021年1月、ユナイテッドアンツはオンラインサイトで商品の販売をスタートした。その反響について大谷さんはこう振り返る。
「フレアパンツの商品がとても好評で、『初めての体験でした』『彼女に褒められました』とメッセージを送ってくださる方もたくさんいらっしゃいました。商品自体の可能性も感じましたし、ブランドとしても長くやっていけそうだと思いました。
お店で買ったパンツを履いてサイズがピッタリだったという経験が少ない方が小柄男性には多い。ユナイテッドアンツはただ商品を売るだけではなくて、“買って、着て、ピッタリだった”という体験自体を売りたいという感覚もあります。僕にとってそれはとても嬉しい瞬間ですし、他のブランドとも差別化できるポイントかなと。
あとそもそも小柄男性って、あんまりポジティヴなイメージがないと思うんですよ。“170cm以下の男性はチビでモテない”というイメージがどうしてもありますよね。僕としてはユナイテッドアンツは小柄男性用のブランドというだけではなくて、ブランドを通じて小柄男性のポジティヴなイメージを発信することも大事にしたいと思っています」(大谷さん、以下「」内同)
商品の販売開始後、購入者からはさまざまなメッセージが寄せられた。中でも大谷さんが印象深かったと語るのはトランスジェンダー男性からのお礼だった。
「一番印象に残っているのが、トランスジェンダー男性の方から寄せられたメッセージでした。生まれた時は女性で、今は男性として生活していらっしゃる方です。その方が言うには、普通のメンズ服だとサイズが大きいので、最近アパレルショップで展開されている“ジェンダーレスサイズ”のアイテムを着ている。けれどそれが本当は嫌だと。“ジェンダーレス”として括られていることが嫌だと仰るんですね。
なのであくまでもメンズブランドとして小柄男性でも着られるユナイテッドアンツのアイテムにはすごく意味があると仰っていただけて。それからSNSでも色々な意見を見たんですけど、同じような小柄なトランスジェンダー男性の意見がたくさんありました。もともとは僕が低身長で困っていたから作ったブランドだったのですが、結果的にそういったLGBTQに関わる課題も解決できたというのはとても嬉しいメッセージでした」