3月25日のプロ野球開幕に向けて、各チームの調整は仕上げの時期に入っている。昨シーズンの3位からの復活を期す巨人はオープン戦で最下位に沈んでおり、不安要素が数多くある。そのひとつが、なかなか固定できない「正捕手」の問題だ。球界の大物OBの間でも様々な意見が飛び交っている。
開幕前に注目を集めたのは、各球団の新人捕手だ。ロッテの高卒ルーキー・松川虎生や愛知大から楽天入りした安田悠馬が、開幕マスクを勝ち取るかが話題になっている。本誌・週刊ポスト(3月18日発売号)では、野球評論家の江本孟紀氏、中畑清氏、達川光男氏が今季の展望を語る座談会企画を掲載しているが、「新人キャッチャーが豊作」という話が盛り上がりを見せた。
現役時代は広島の黄金期を正捕手として支えた達川氏は、楽天・安田の打力について「(阪神の)佐藤輝明に匹敵するという評判だよね」と期待を寄せた。それに対して巨人OBの中畑氏は古巣の正捕手が定まらないことを不安げにこう語った。
「1年目から使えそうなキャッチャーが出てくるとさ、他の選手とは何違うんだろうと思っちゃうのよ。巨人なんて、誰がホームベースを守るのって感じじゃない。大城(卓三)、岸田(行倫)、小林(誠司)、山瀬(慎之介)といるけどさ……」
そこから話題は、「キャッチャーに求められる優先順位」へと展開していく。江本氏は「ピッチャーの目線で言えば、最も大事なのは肩で、2番目がバッティング、3番目が頭ですかね」と指摘し、こう続けた。
「頭は後からついてくるから、やっぱりランナーの進塁を阻止してくれるキャッチャーがありがたいですよ。ただ、これはピッチャーから見た順番で、ベンチから見ればバッティングが一番大事でしょうね。よくリード面が大事といわれるが、ピッチャーがよければうまくいくんです。二流のピッチャーにサインを出しても、構えたところにキレのいいボールなんて来ないんですからね」
それに対して達川氏は「ピッチャーとしては、ある程度キャッチングができて肩がいいのがありがたいわけですよね」として、江本氏の南海時代を振り返りながら、こう応じた。
「江本さんは手足が長いからクイックができない。肩が衰えてきたノムさん(故・野村克也氏)は困ったと思うよ。だから二塁に送球しやすいようにウエスト(捨て球)ばかり要求する。(阪急の)福本(豊)さんがランナーに出ると、江本さんに平気でノースリーまでウエストを要求するんだから(苦笑)」
誰か小林にバッティングを教えないのか
そこから話題は巨人の正捕手問題に戻り、江本氏は「そういう意味では、巨人はキャッチャー選びの基準が中途半端になっている。小林は肩がいいけど打てない。大城は打てるから使っていたけど、打てなくなってしまったしね」と嘆いた。達川氏も「巨人はキャッチャーさえよければ優勝だけど、キャッチャーが悪すぎる」と指摘した。