今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は感染症とともに生きてゆかねばならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、国内で感染者数が急増している「梅毒」について、さらに解説する。
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感染症対策の岡田晴恵です。今週は性感染症の「梅毒」を取り上げます。
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌による性感染症で、感染者の皮膚や粘膜と直接接触することで感染します。性風俗と強く関わっていたことから、昔は「花柳病」とも呼ばれ“感染すると廃人になる”と恐れられました。
このように梅毒は、昔の病気というイメージがありますが、この数年、国内で感染者数が急増。「他人事ではない」要注意の感染症となっています。
日本人の秦佐八郎博士によるドイツ留学時代(1910年)のサルバルサン開発という歴史に残る偉業や、ペニシリンの抗生物質の発見で、梅毒は適切に治療すれば治る病となり、患者は激減しました。
しかし、感染者が減ればその病気の怖さも忘れさられます。近年の日本では、感染者が男女問わず、さまざまな世代層で増えています。自分と大切な人を守るためにも、知っておきたい感染症の筆頭格でしょう。
梅毒は慢性感染症で、早期発見(検査)、早期治療開始がポイントです。抗菌剤で完治しますが、治療を中断したり放置したりすると、脳や心臓に重篤な合併症が起こり、死に至ることもあります。
また、症状が多彩で、無症状の期間もあるため「治った!」と勘違いする人もいますが、その間も体内で病原体が増え続けるため、この無症候性の感染者からも感染します。本人も感染を気づかず、知らずに感染を拡げやすく、治療が遅れることで重症化や治療の長期化に繋がることもあります。恐ろしい感染症ですね。