先月、日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)に、初めてAI(人工知能)を使って執筆された小説が入選し、話題を集めた。AIが進化し、我々の生活やビジネスに浸透しつつあるなかで、文章を書くために作られたAIも誕生している。その一つ、「AIのべりすと」を作成したのは、ゲームクリエイターのSta(すた)さん。なぜ文章を書くためのAIを作ったのか? 人間とAIが共存する未来像とは? 「AIのべりすと」を使った文学賞の開催を機に、Staさんに話を聞いた(前後編の後編)。
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「人間のためのAI」を突き詰めていきたい
ゲームクリエイターのStaさんは、小説や文章を書くためのAIである「AIのべりすと」を、たった一人で作り上げた(「AIのべりすと」の仕組みについては【前編】をお読みください)。その動機は何だったのか。
「ゲームのプロットやシナリオを書くときの補助にしようと思って作り始めました。僕自身、ゲームを作る作業のなかで、その6割から7割くらいが、クリエイティブではない時間です。クリエイターって、意外とクリエイティブじゃないことに費やす時間が多い。それをなんとかしたいというところから始まっています」
クリエイターのためのAIを作りたい。文章を書く「AIのべりすと」はそうして生まれた。Staさんは、世界中にファンを持つゲーム・アプリ「Tone Sphere」などを開発したクリエイターだ。幼い頃からパソコンに興味を持ち、小学生で不登校になるも9歳で200本のゲームを作成した実績を持つ。
そしてStaさんが手掛けるAIは「文章」に留まらない。
「今作っているのは、簡単な線を描いたらきれいな円に換えてくれるAIや、『眼鏡をかけた長身の男性』とか『学生服を着た女の子』と文章でオーダーすると、その通りのキャラクター画像を描いてくれるAIなどです。やりたくないことが何かは人によりますが、人間がやりたくないことをAIにやってもらうことはできないか。そうした人間のためのAIを突き詰めていきたいと思っています」