海外で生活をした経験がある人なら、日本では好まれているのに海外では見向きもされない食材の存在に驚いたことがあるはず。例えば大豆。今でこそ海外でも大豆が人気だがが、以前は長らく「家畜の餌」という認識だった。
さらに「野蛮」「グルメじゃない」などの理由から、外国人が拒否反応を示す日本の食べ物はまだまだある。代表的なのは「ごぼう」。外国人から見れば「木の根っこ」にしか見えないのだ。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長の下方浩史さんが言う。
「第二次世界大戦中にアメリカ人捕虜にごぼうを食べさせた日本人が、『木の根っこを食べさせるなんて、虐待だ』と、戦犯として裁かれたことがあります。いまでも、ごぼうを食べるのは日本だけでしょう。中国でも食べられていません」(下方さん・以下同)
たんぱく質を筆頭に、栄養の宝庫である「卵」は世界中で食べられている。だが、生のまま食べる文化は日本のみ。海外で卵かけご飯は厳禁だ。
「海外で卵を買うと、鶏のふんや羽根がついたままで不衛生。生で食べるとサルモネラ菌による食中毒を起こしてしまう。日本人が安心して生卵を食べられるのは、消毒してから出荷されているおかげです」
きのこの王様である「まつたけ」も、日本と世界では扱いに大きな差がある。
「欧米では、まつたけの香りは『履き古した靴下のにおい』といわれています」
「わさび」も、外国人には耐えられない味だという。
「わさびは殺菌作用があって生ものに欠かせない食材です。寿司の普及とともに世界に広まりましたが、苦手な外国人は多い。辛いものが大好きなネパール人に食べさせたところ、『なぜ、こんなに辛いものを食べるんだ』と驚かれました。唐辛子のヒリヒリした辛さと違って、鼻にツンと抜けるあの刺激は日本人しか理解できないようです」