ワクチン接種をめぐっては、人によってさまざまな考え方の違いがあり、判断は各人に委ねられる。しかし、保護者の同意が必要な子供の場合、その意見対立の妥協点は見出しにくい。
「うちは当初、夫婦で話し合い、子供への接種は当面は止めておこうと決めていました。しかし、かかりつけの小児科医に接種を勧められ、その小児科医に診てもらっている団地のママ友もみんな打たせると聞いて、妻が“接種させたほうがいい”と考えが変わったんです。ママ友や子供の間で、誰が接種させていないかも噂になりつつある。夫婦間でどうすべきか話し合っていますが、平行線が続いています」
Aさん(39歳・男性)はそう話すと、思わずため息をついた。Aさん夫婦の頭を悩ますのは10歳の娘への新型コロナワクチンの接種についてだ。
全国で小児(5~11歳)に対するワクチン接種が始まった。心筋炎等の発症例が少ないファイザー製ワクチンを使用し、接種量は成人(12歳以上)の3分の1に抑えられている。成人と同じく3週間間隔で2回接種する。
これまでの12歳以上への接種との大きな違いは、小児に対しては、極力接種すべきとする「努力義務」がはずされたことだ。その理由について、厚労省は『新型コロナワクチンQ&A』で、「小児については、現時点において、オミクロン株に対するエビデンスが確定的でないこと」を挙げている。
接種は親の判断に委ねられたため、5~11歳の子を持つ家庭は、接種させるべきかで頭を悩ますこととなった。
夫婦家族問題コンサルタントの池内ひろ美氏はこう語る。
「ワクチン接種の是非については、夫婦間の意識の違いや価値観の違いでトラブルになるケースが多いです。私のところにも相談が相次いでいますが、どうしても意見の押し付け合いになってしまうため、解決には時間がかかります」
スマホを取り上げ「ちょっと待って」
首相官邸のホームページによると、3月14日までに接種した小児は、接種対象約700万人のうち7万7766人で、1%ほどと出足は鈍い。
今回、保護者に取材したところ、接種を躊躇する理由で多かったのは、「副反応」だった。11歳の娘を持つBさん(46歳・女性)はこう話す。
「私自身、2回目のワクチンを接種した後、不正出血があったんです。ストレスが原因だと頭では理解しているのですが、絶対にそうだと信じ切れない自分もいる。娘は初潮を迎えたばかりで、ただでさえ、規則正しく生理周期がこない可能性があるのに、もしワクチンによって何か異常があったとしても、気づけないかもしれない。デルタ株が流行していた頃のように重症化リスクが高い時期でしたら接種させたでしょうが……」