広島からポスティング制度を利用して、カブスと5年契約を交わした鈴木誠也外野手(27)。日本人野手最高額となる5年総額8500万ドル(約103億円)の大型契約を勝ち取り、3月18日(日本時間19日)のチーム合流以降はフリー打撃で柵越えを連発するなど、順調な調整ぶりを見せている。
ミート力、長打力、走力、守備力、送球力を兼ね備えた「オオタニ以来の5ツールプレイヤー」との呼び声高い鈴木だが、実際に結果を残すことはできるのか。メジャーリーグで結果を残した日本人野手はほとんどが左打者であることもあり、前評判通りの活躍ができるかどうかに懐疑的な声もある。
MLBに詳しいスポーツジャーナリストの出村義和氏によれば、鈴木には払拭すべき不安要素が3つあるという。1つ目は、シカゴの特徴的な季候への順応だ。
「シカゴは“ウィンディーシティ(風の街)”とも呼ばれる、ミシガン湖からの強風が有名な土地です。鈴木は長打と外野の守備が魅力の選手ですから、攻守両面で風の影響を大きく受ける。打球が風に大きく左右されるので、飛距離を求めて打撃フォームを崩さないかが心配ですね。阪神の左打者が、甲子園の浜風に悩まされるのと同じような現象が起こる恐れがある」
2つ目は故障リスクだ。鈴木は2017年のシーズン中、フェンス際のプレーで全治3か月の大ケガを負ったことがある。
「カブス本拠地のリグレー・フィールドは外野のファウルゾーンが狭いのが特徴的。広島・マツダスタジアムとはフェンスとの距離感が違うため、わかっていても潜在的な恐怖心はあるでしょう。
また本人が入団会見時に触れていましたが、メジャーリーガーとの体格の違いに焦って身体を無理に大きくしてしまわないかが心配です。鈴木は日本人選手の中ではずば抜けて体格がいいのですが、メジャーリーガーと比べるとどうしても“身体の厚み”で劣っているように見えてしまう。スプリングトレーニングの期間も短いので、焦ってウエイトトレーニングをすると故障リスクは上がります」(出村氏)
最後に気になるのは、「勝負強さ」を発揮できるかどうか。鈴木の日本での通算得点圏打率は.309と上々だが、意外にも「チャンスに弱い」というイメージがあるという。
「日本で6年連続3割25本塁打以上という王貞治・落合博満以来の偉業を達成している鈴木ですが、実は一度も100打点以上を達成したことがないんです。本人も『僕の大嫌いな得点圏でまわってきて、みなさんどうせ打たないだろうと思っていたと思う』とヒーローインタビューで発言するなど、度々“チャンスで打てない自虐”をすることがありました。
全試合で4番に座った昨年の東京五輪でも、打率.167、打点はソロホームランの1のみに終わるなど、プレッシャーのかかる場面に弱いというイメージは否定できない。異なる環境のなかで、いつも通りのパフォーマンスをできるかどうかがカギになりそうです」(同前)
周囲の懸念を一掃する活躍を見せられるか。