23時36分──羽生結弦(27才)のファンは、時計の針が指す方向に不安を募らせた。3月16日、宮城県と福島県で最大震度6強の揺れを観測した地震は、死者4人のほか東北新幹線が脱線するなどの甚大な被害をもたらした。
発生時刻の23時半過ぎは、羽生がいつも地元の「アイスリンク仙台」で練習に取り組んでいる時間帯だ。そのスタイルは北京五輪後も変わらず続いていた。22時半頃に父親が運転する車でリンクを訪れ、帰路につくのは、決まって日付をまたいだ25時頃。
「彼は右足首を負傷した五輪後も、これまでと同じように深夜にアイスリンクを貸し切りにして、ひとりで練習を続けてきました。今回の地震で、11年前のフラッシュバックが起きていないかが心配でなりません」(仙台のスケート関係者)
2011年3月11日、東日本大震災のまさにその瞬間、当時16才だった羽生はこのリンクの上にいた。氷が波打つほどの激しい揺れに、スケート靴を履いたまま這いつくばって避難したという。アイスリンク仙台は壁が破損するなどの被害を受け、4か月もの間、営業を中止した。その後、羽生は自身の書籍の印税をすべて寄付するなど、リンク発展のために尽力してきた。
今回の地震でも、リンクは一時休業を余儀なくされたが、幸い大きな被害はなく、22日に営業を再開した。だが、羽生の状況はいまのところ届いていない。
羽生への影響が心配される一方で、明るいニュースも飛び込んできた。コロナ禍で中止が続いていた『ファンタジーオンアイス』(FaOI)の3年ぶりとなる開催が決定したのだ。公演は幕張、名古屋、神戸、静岡で行われ、公式サイトが3月18日に発表した出演スケーター第1弾には、ステファン・ランビエール(スイス)、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)、ジョニー・ウィアー(米国)ら豪華メンバーが名を連ねた。
出演者は順次発表される予定だが、今後最も注目されるのは、羽生の出場の可否だ。羽生とFOIの関係は長く、2010年の初参加以降、2016年にけがを理由に見送った以外は、出演を欠かしていない。