日本では政治家などからジェンダー差別を容認したかのような発言が繰り返されている。やはり日本のジェンダー平等に対する意識は遅れているのか――。最近、女性の服装においてもそう感じた出来事があったと作家・甘糟りり子さんが振り返る。
* * *
Netflixの『エージェント物語』がおもしろくて、シーズン4まで一気に見た。芸能事務所を舞台にしたフランス発のコメディだ。
はなやかそうに見える仕事の裏側や人間関係の絡み合いが興味深いのだが、毎回さまざまな俳優が本人役で出てくるのもこの作品の魅力。イザベル・ユペールやシャルロット・ゲンズブール、ジャン・レノにシガニー・ウィーバーなどがみんなカメオ出演していて、物語やキャラクター設定が「いかにもありそう」なのだ。
シーズン2ではジェリエット・ビノシュ出演の回が印象的だった。舞台はカンヌ映画祭。ジュエット・ビノシュ演じるジュリエット・ビノシュは映画祭に出席する際の衣装を試着する。身体にぴったりした装飾過多のドレスを用意されたが、ビノシュがあまり乗り気ではない。けれど、デザイナーは着飾ることができるのは「女性の特権です」。「そうかしら?」とビノシュ。
挙句、試着中に背中のファスナーが壊れてしまう。ほっとして着心地のいいアルマーニのタキシードを選び直すのだが、直前になって映画祭の総監督を務める女性からNGを出されてしまう。別の女優(あえて俳優ではなく、女優と書きますね)もまたタキシードで出席するから。総監督は「女性が二人、同じような格好で舞台に並ぶのは困るわ」という。男性は全員タキシー度でもそんなことはいわれないのに。仕方なく、直ってきた装飾過多のドレスと15センチのハイヒールで映画祭に出席することになる。
この回は女優がいかに俳優でなくて「女」優として扱われているかが物語になっていた。ビノシュはそれに抵抗する。ドタバタな流れがおかしくてゲラゲラ笑いながら見ていたが、最後のスピーチには心をぎゅっと掴まれ、涙が出そうになった。ネタバレになってしまうので詳しくは書かないけれど、すばらしい場面。ぜひ、Netfilixで見て欲しい。私もこんなふうに、自分の場所から訴えていきたいと思った。少しでもいいからね。