プロ野球が3年ぶりに入場制限なしで開幕し、6球場には18万4453人が詰めかけた。日本ハムのビッグボスこと新庄剛志監督がどのような采配を振るかなど、見所が多い今年のペナントレースだが、2万564人が観戦した楽天生命パークでのロッテ対楽天のカードでは、2リーグ制後初となる「開幕新人捕手対決」が注目された。そのプレーぶりは大物球界OBの元捕手の目から見ても、注目に値するものだったようだ。
楽天で球団初の開幕マスクを託されたのは、ドラフト2位で入団したばかりの安田悠馬(22、愛知大)。一方のロッテでは、ドラフト1位の松川虎生(18、市和歌山高)が、2006年の西武・炭谷銀仁朗(現楽天)以来、史上3人目となる高卒新人開幕マスクをかぶった。スポーツ紙デスクが解説する。
「松井秀喜似の安田の高校時代のニックネームは“ゴジラ”。プロでも『4番・捕手』を目標としている。松川はセカンド送球1.8秒台、遠投110メートルの強肩で、高校通算43本塁打の記録も持っている。父親が阪神ファンで、阪神がリーグ優勝した2003年に生まれたことから、虎生(こう)と名付けられた。どちらの新人も、“打てる捕手”を目指している」
注目カードとなった開幕戦では安田、松川とも9回をフル出場し、結果はロッテが4対0と完封勝利。松川に軍配が上がった恰好で、高卒新人捕手の勝利は67年ぶりとなる快挙だった。一方の安田は2盗塁を許しての黒星デビュー。打撃ではともに3打数0安打だった。
2戦目は雨天中止となり、3戦目はロッテ・佐々木朗希と楽天・岸孝之が先発。先発マスクは開幕戦と同じ松川と安田となった。ともに初安打を放ち、ゲームは延長戦の末、11回裏に楽天がサヨナラ勝ち。開幕カードは1勝1敗となったが、松川は11回を守り通したのに対し、安田は9回に代打が送られ、打席に入った炭谷がそのまま延長戦の守備についた。
この新人捕手対決を広島の黄金時代を正捕手として支え、後に監督も務めた達川光男氏はどのように見たのか。
「プロとアマチュアの違いで苦労するのはサインや配球ではなく、ゲームでピッチャーが投げる気合いが込められたボールが捕れるかどうかなんです。そういう点では2人とも合格です。特に松川のキャッチング技術は凄い。ミットが下から上に出るので、どのような球にも対応できる。まちがいなくプロで大成する。あと、フレーミングというのですが、ボール気味の球をストライクに見せる技術は高卒ルーキーとは思えないよね。
安田もキャッチングは下手じゃないが、楽天は(炭谷)銀仁朗も太田(光)も打てないので、バッティングの豪快さで先発マスクとして使ってもらっているところがあるでしょう。まずは攻撃的なオーダーを組み、逃げ切る時には2戦目のように(途中から)銀二朗を使うんじゃないかな。サヨナラ負けしたが松川は最後までマスクをかぶっており、シーズンが進んでいく中でチームの方針により2人の起用法に違いが出てくるかもしれない」